若手棋士(当時)3分インタビュー11本

近代将棋1989年7月号~1990年8月号の「ニューウェーブ」より、3分インタビューのまとめ。

「ニューウェーブ」は、若手棋士の日常の姿と3分インタビューで構成されたグラビア記事。13回に渡り連載された。撮影は弦巻勝さん。

1989年
7月号 森内俊之四段
8月号 先崎学四段
9月号 森下卓六段
10月号 屋敷伸之四段
11月号 中川大輔四段
12月号 小倉久史四段
1990年
1月号 日浦市郎五段
2月号 阿部隆五段
3月号 村山聖五段
4月号 中田功四段
5月号 郷田真隆四段
7月号 佐藤康光五段
8月号 羽生善治竜王

が登場した。(タイトル・段位はインタビュー時点のもの)

先崎四段、森下六段の載った号が残念ながら手に入っていないが、11人の棋士の当時考えていたことを質問毎にまとめてみた。

Q1.棋士では誰が好きですか?

森内四段…米長邦雄。なんといってもカッコイイでしょう。
屋敷四段…特にいません。
中川四段…米長邦雄。
小倉四段…中原誠
日浦五段…中原誠
阿部五段…中原誠
村山五段…いない。
中田功四段…大山十五世名人
郷田四段…米長邦雄先生。
佐藤五段…米長邦雄王将。
羽生竜王…中原先生です。

Q2.いま一番強いと思う棋士は誰ですか?

森内四段…南芳一
屋敷四段…中原誠
中川四段…羽生善治
小倉四段…羽生善治
日浦四段…中原誠
阿部五段…羽生先生。
村山五段…羽生、谷川。
中田功四段…羽生くん。
郷田四段…谷川浩司名人。
佐藤五段…中原誠棋聖。
羽生竜王…名人戦の勝者。

Q3.プロになって今日まで何勝何敗ですか?

森内四段…73勝27敗です。
屋敷四段…33勝9敗。
中川四段…57勝26敗。
小倉四段…25勝14敗。
日浦五段…140勝。負けは判らない。
阿部五段…知らない。
村山五段…知らない。
中田功四段…指しわけくらい。
郷田四段…やってません。
佐藤五段…114勝43敗
羽生竜王…215勝59敗

Q4.好きな戦法は?

森内四段…矢倉
屋敷四段…変な急戦
中川四段…横歩取り
小倉四段…振り飛車
日浦五段…相掛かり
阿部五段…矢倉
村山五段…矢倉
中田功四段…三間飛車
郷田四段…特にありません。
佐藤五段…居飛車戦法
羽生竜王…矢倉です。

Q5.棋界はこれから先どう変わっていくと考えますか?

森内四段…もっと多くのファンの人達に将棋が解ってもらえるような制度に変えてゆかなければと思います。
屋敷四段…わからない。
中川四段…地方のファンをもっと多くしたい。
小倉四段…どんどん発展していく。
日浦五段…楽観的に考えている。
阿部五段…棋士も含めて将棋関係者の力を借りて少しずつでも良くして行きたい。
村山五段…Aクラスのメンバーが少しずつ変わると思う。
中田功四段…良くなってほしい。僕達が頑張っていく。
郷田四段…分かりません。
佐藤五段…いい方向に向かっていると思う。
羽生竜王…よい方向へ進むと思います。

Q6.収入と小遣いは?

森内四段…昨年は600万円くらい。今年は朝日で優勝したので1000万円くらいになると思います。小遣いは月10万円弱です。
屋敷四段…月20万円くらいです。
中川四段…年300万。全部。
小倉四段…300万。全部。
日浦五段…300万と少し、今年は判らない。全部。
阿部五段…300万と少し。月10万ちょっと。
村山五段…わずか。5万円位。
中田功四段…300万ちょっと。全部です。
郷田四段…まだ貰っていません。
佐藤五段…500万円。
羽生竜王…2000万円。自分が使う分だけ。

Q7.好きなタレント、歌手は?

森内四段…南野陽子、Wink
屋敷四段…サザンオールスターズ
中川四段…賀来千香子
小倉四段…川嶋紀子さん
日浦五段…いない。
阿部五段…南野陽子、プリンセス・プリンセス
村山五段…たくさんいます。
中田功四段…特にいません。
郷田四段…荻野目慶子
佐藤五段…いません。
羽生竜王…菊池桃子

Q8.本はどんなものを読みますか?

森内四段…西村京太郎、赤川次郎
屋敷四段…赤川次郎
中川四段…ポパイ、メンズノンノ
小倉四段…赤川次郎
日浦五段…旅行関係の本
阿部五段…歴史物。司馬遼太郎
村山五段…エドマクベイン、ブラックベリー
中田功四段…司馬遼太郎
郷田四段…普通の小説
佐藤五段…あまり読みません。
羽生竜王…推理小説。エラリークイーン

Q9.こわいと思うことは?

森内四段…交通事故
屋敷四段…自分自身
中川四段…わからない
小倉四段…自分の生活。同年代に比べ勝手な事をしているから。
日浦五段…慢心
阿部五段…自信を無くすこと。
村山五段…あまりない。
中田功四段…病気かな。
郷田四段…女性
佐藤五段…なまけぐせ。
羽生竜王…病気

Q10.いま一番ほしいものは?

森内四段…ガールフレンド
屋敷四段…ありません。
中川四段…車の免許
小倉四段…車、BMW
日浦五段…タイトル
阿部五段…いろいろある。
村山五段…あまりない。
中田功四段…特になし。
郷田四段…恋人
佐藤五段…英会話の実力
羽生竜王…特になし

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当時は順位戦の在籍クラスによって他棋戦の対局料も定められていたため、若手棋士がどんなに勝っても対局料収入がなかなか増えないような構造だった。この仕組みは数年後に変えられることになる。

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郷田真隆四段(当時)は、四段に昇段直後のインタビューなので、まだ一局も対局をしていない頃。

デビュー当時から非常に有望視されていたことがわかる。

この頃は、「普通の小説」、「女性」など、突っ込みどころのある回答が多いのが特徴だ。

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森内俊之四段(当時)の「西村京太郎」は、森内九段の鉄道好きな面が現れている。

村山聖五段(当時)の「エド・マクベイン」は、アメリカの推理小説作家で、代表作に「87分署シリーズ」などがある。

中川大輔四段(当時)の「ポパイ」と「メンズノンノ」。中川八段のお洒落の源泉はこの頃から始まっている。

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佐藤康光五段(当時)は、本も特に読まず、好きなタレントも特になく、一番ほしいものが「英会話の実力」と、非常にストイックな方向性であったことがわかる。

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好きなタレント・歌手。

屋敷伸之四段(当時)が一人だけ「サザンオールスターズ」と純粋に音楽面から答えているのがユニークだ。

小倉久史四段(当時)の文仁親王妃紀子殿下は、ちょうど婚約が決まった頃のこと。

村山五段の「たくさんいます」も微笑ましい。

中川四段の賀来千香子さん、なかなか鋭い。

森内四段のWinkは、鈴木早智子さんと相田翔子さん、どちらがより好みだったのかも知りたいところ。

郷田四段の荻野目慶子さんは、郷田四段よりも6歳年上。

この3年後、郷田真隆王位(当時)は将棋世界誌上で西田ひかるさんと対談をしている。

郷田真隆王位(当時)・西田ひかるさん対談

一方、羽生善治竜王(当時)は、この1990年に将棋世界誌上で菊池桃子さんとの対談が実現されている。

羽生善治竜王(当時)・菊池桃子さん対談

羽生善治竜王(当時)「好みのタイプなんてお聞きしていいですか」

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この頃の時代、阿部隆五段(当時)のプリンセス・プリンセス以外、回答にあったのは顔と名前の一致するタレントばかり。

1980年代までは歩く週刊明星と呼ばれていた私だが、1990年代に入ってから急速にタレントの顔と名前が一致しなくなったのだということを思い出させてくれる近代将棋の記事だ。