藤井猛三段(当時)の王手見落とし局

将棋世界1990年12月号、駒野茂さんの「関東奨励会」より。

 新入会員の将棋を今月号で紹介しようと思っていたが、三段リーグを取材していて、「あっ」と思わず声を出しそうになった局面を見たので、それを紹介したい。

 1図は近藤三段-藤井三段の終盤。近藤が▲6三桂不成と王手をかけた局面だ。ここから、意外な結末となった。

1図以下の指し手
△4九飛▲7一桂成

 藤井の読みは”△8一玉▲9四歩△4九飛▲6九歩△5八銀で勝ち”というもの。ところが、なにをとち狂ったのか、最初の2手の交換を入れずに、飛車を打ち込んでしまったのである。秒読みとはいえこの手を指した時は52秒。藤井は局後、「まだ時間はあったんだから、王様を見ればよかった」と、なげくことしきりだった。

 初戦ということで、異常なムードとなっていた(熱気と闘気が凄い)室内、藤井はその中にいて、ボーッとなり、冷静さを欠いてしまったのだろう。

 それにしても▲7一桂成とした近藤の手は早かった。

 この話を聞きつけたやからが、「もし慌てて▲7一桂不成としちゃったら、勝負はどうなるんだろう」などと冗談を言っていたが、藤井が△4九飛と打った時点で反則負けだから、先の話は意味のない会話だ。

 近藤もよっぽど驚いたのだろう。王様を取っちゃうなんて前代未聞だ。

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「好事魔多し」という言葉が頭の中に浮かんでくる。

それとともに、「厄落とし」という言葉も思い浮かんでくる。

藤井猛三段(当時)は、初戦はこのような目に遭ったが、この期の三段リーグで1位となって、四段に昇段している。

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2002年に、藤井猛九段がこの時のことを書いている。

藤井猛三段(当時)玉を取られた一局

 

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