大山康晴十五世名人の、意味がすぐには理解できない振り飛車らしい一手

将棋マガジン1991年11月号、「公式棋戦の動き」より。

勝ち抜き戦

 青野八段を破って5人抜きを果たした森内五段は、続く淡路八段、大山十五世名人と相対した。

 7人目の対大山戦は、大山の中飛車に、森内は居飛車穴熊を用いた。

 この将棋は、森内の動き過ぎを大山が見事にとがめて受け切りの快勝局であったが、序盤で、ハテ? と手が止まる局面があったので紹介したい。

 4図がその場面で、森内が△2四角と出たのに対して、大山が▲6五歩と突いたところ。

 ▲6五歩は角が成って来い、という一手だ。

 実戦は△7四歩だったが、成るとどうなるか。△5七角成以下、▲6六角△同馬▲同銀△8六歩▲8四歩△6九角▲7七金△8四飛▲8六金△8七歩▲6八飛△8六飛▲6九飛(A図…常に▲7五角の飛車銀取りをみている)となり、これは振り飛車が指せる展開となる。

 ▲6五歩の着手に、消費時間はたったの10分。もちろん大山はこの順を深く早く読んだに違いないが、スパッと指せるのは大山の年輪と言えるであろう。

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日の出の勢いの6人勝ち抜きの森内俊之五段(当時)を食い止めたのだから、さすが大山康晴十五世名人。

大山十五世名人が亡くなる1年前のこと。

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4図、▲7八金型(△3二金型)向かい飛車をどんなに数多く指していたとしても、5七に角を成らせる指し方はまず思いつかない。まさしく大山十五世名人ならではの技だと言える。

△5七角成以下▲6六角に、△同馬ではなく△2四馬なら、▲8四歩と打って先手が有利になる。

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5六歩の形ではなく5七歩のままだった場合は、一歩損になるので、うまくいくのかどうかは分からないが、とにかく参考になる指し方だ。実戦では怖くて真似はできなさそうだが……