佐藤康光前竜王(当時)「例えばバカ!!とか言ったらわかりますよ」

将棋マガジン1995年11月号、読者の投稿欄「コマゴマ掲示板」より。

将棋マガジン1995年12月号より、撮影は弦巻勝さん。

 公開対局などでよく、そのすぐ横で大盤解説をする場合がありますが、常日頃疑問に思っていたことの一つが、「解説者の言葉は対局者の耳に届いているのだろうか」ということでした。もし届いているなら、いくら直接的な表現を避けていても、プロなら大体わかってしまうんじゃないか、あるいは思考の妨げになりはしないか、といろいろ想像したものです。

 ところで先日、仙台で行われたJT日本シリーズの高橋道雄九段vs森内俊之八段戦を見に行ったのですが、その大盤解説で聞き手の林葉直子女流が解説の佐藤康光前竜王に前述と同様なことを尋ね、佐藤前竜王が答えて言うには「あまり聞こえない(気にならない)」ということでした。しかし全然聞こえないかというとそうでもなくて「例えばバカ!!とか言ったらわかりますよ」(バカ!!だけずいぶん大きい声だった)。その時、対局中の森内八段の口元に笑みが…。少しばかり疑問が氷解したのを感じました。

(秋田県 Tさん)

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大盤解説が聞こえる環境での公開対局で、「解説者の言葉は対局者の耳に届いているのだろうか」は常に起こってくる疑問だが、結果的にはケースバイケースということになるのだろう。

持ち時間が非常に短い対局は、短距離走と同様に、対局中は絶え間なく盤上に集中していることが多いので、通常は佐藤康光前竜王(当時)が話した通り「あまり聞こえない(気にならない)」。

ところが、「バカ!!」や「歌舞伎町」や「心霊現象」など、将棋の解説ではほとんど出てこないような言葉が発せられると、わかる場合があるということ。

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「その時、対局中の森内八段の口元に笑みが…」

対局者が、佐藤康光前竜王と仲の良い森内俊之八段(当時)だったので、「例えばバカ!!とか言ったらわかりますよ」と踏み込むことができたのだと思う。

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この一局は、森内八段が勝っている。

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持ち時間の長い名人戦で、大盤解説者の声が対局室にまで流れてきた例もある。

名人戦の対局室に聞こえてきた大盤解説