王将戦第5局は、深浦王位の角交換型中飛車と、羽生王将の3筋位取りの戦いとなっている。角交換型中飛車は、向飛車への転換も含みとなっているが、中飛車から向飛車へ転換した将棋で、私が最も印象に残っているのが、昭和47年十段戦の桜井昇五段(先手)-升田幸三九段戦。
攻める振飛車党にとっては感涙の棋譜。
先手が位取りの態勢をとる間に、5筋の交換。
ここで△5四銀ではなく、突如向飛車に。
△3二金型にして、2筋から仕掛ける。飛車交換は先手不利。
△4五歩、△3五歩を伸ばして石田流に。
後手は3筋の歩を交換。図の▲4八金は5八の金が寄ったものだが、寄らないと△2七歩の叩きから△3八歩と垂らされ、と金を作られてしまう。
それぞれ駒組みの整備。後手は△4四角、△3三桂のあと△7一角と深く引く。この位置に深く引くのは升田九段好み。
後手は、銀が3五まで出て攻撃に加わる。振飛車にとっては理想的展開。この後の▲7七桂に対し升田九段は△2七歩から△3六歩と攻め140手で升田九段が勝った。
しかし、升田九段の自戦記では、△4四飛▲5八金△4一飛▲4八歩△2一飛の攻めのほうが良かったとあった。
確かにこれなら必勝形だ。