「渡辺君詰んだ?」

近代将棋2005年3月号、村山慈明四段(当時)の「定跡最前線特捜部 File8.対藤井システム▲3五歩早仕掛け」より。

 12月16日。竜王戦第6局を見に天童へ行ってきた。敗因不明の熱戦であったが、挑戦者が後一歩及ばなかった。

 将棋の詳しい内容については挑戦者の渡辺明六段自身が本誌24ページから書いているので参考にしていただきたい。ここでは対局終了後に渡辺君から教えてもらったエピソードを紹介する。主人公は本講座登場2回目、M先生である。

 対局1日目の夕食会。普段お酒をあまり飲まないM先生だが、ホテルで出されたワインが気に入ったらしく、かなりの量を飲み、フラフラになっていたらしい。そんなとき立会人の長谷部久雄九段が登場し、大勢の前で詰将棋を出したそうだ。図は下図のとおり。

長谷部詰将棋

見た目は割とやさしそうだが、渡辺君は4~5分考え込んでしまったようだ。竜王戦の局面で頭が一杯だったのかもしれない。そこへM先生がやってきてこんな会話があったそうだ。

「渡辺君詰んだ?」

「いや、詰まないんですよ」

「遅い!」

「M先生何分で詰ましたんですか?」

「10秒だ!」(自己申告なので正確にはわからない)

 シラフでもこの問題を10秒で解ける人はそういないはずだが(後ほど色々な棋士に出題してみたが10秒で解けたのは深浦八段だけである。無論酔ってない)、泥酔状態でぱぱっと詰ましてしまうM先生はやはり詰将棋の申し子なのだろうか。

 M先生の詰将棋に関わる逸話がもう一つある。M先生とのVSのある日、僕は休憩中に詰将棋を解いていた。が、13手詰めがなかなか詰まない。どれどれとM先生が考え始めた。

「ピッピッピッピッピーー……」(そんな効果音つけて解けるなら誰も苦労はしない)

「何だ簡単じゃん」

 その間10秒あったかどうか。僕はM先生の桁違いの速さに脱帽し、苦笑するしかなかった。

 とにかくM先生の詰将棋を解くスピードはズバ抜けている。今度何かの企画でスーパー敦史君と勝負したら面白そうですね。

(以下略)

——–

森内俊之竜王(当時)に渡辺明六段(当時)が挑戦した第17期竜王戦、第6局は2004年12月15日~16日に山形県天童市の「滝の湯ホテル」で行われている。

立会人は長谷部久雄九段、副立会人が三浦弘行八段(当時)。

村山慈明四段(当時)の講座の2ページ目には、「竜王戦第6局の控え室で検討中、僕のとなりは三浦八段、もう一人は渡辺六段の着付けを手伝った白瀧五良さん」とキャプションがついた写真が載っている。

普段は酒をあまり飲まない、詰将棋を解くのが早い、ということから考えても、M先生は三浦弘行九段であった可能性が高い。

——–

そこで起きてくる疑問は、「主人公は本講座登場2回目、M先生である」ということ。どこで登場していたのだろう。

村山四段のこの時の講座は8回目、近代将棋2004年8月号から全て調べ直してみた。

すると、消去法的に浮かび上がってきたのが、近代将棋2004年11月号。

この記事である。→升田幸三賞ばりの”新説明”

イニシャルは書いていないが、そう思って読むと、たしかに三浦九段らしさが溢れている。

詰将棋の早解きも含め、三浦九段らしい魅力が全開だ。

 

 

 

「「渡辺君詰んだ?」」への1件のフィードバック

  1. 長谷部先生の8段昇段記念で、記念品としていただいた額にこの図が入っていました。
    いただいたとき、これが詰め将棋であるとは書いておらず、詰むのか詰まないのかわからないまま、何十年も部屋に飾ってました。。。

コメントを残す