「巨匠が語る将棋界今昔 木村義雄 VS 倉島竹二郎」(最終回)

将棋世界1985年7月号、名棋士を訪ねて「巨匠が語る将棋界今昔 木村義雄 VS 倉島竹二郎」(後編)より。

大山、升田、中原、谷川の人物評は?

木村 大山君と升田君とは、ぼくは随分将棋を指している。指しているから、いくらでも言いようがあるけど、谷川君とは将棋を一局も指してないよ。会ったのは二度だよ。一度は家に訪ねてきてくれたのと、連盟で挨拶されたのだけだ。だから人物評たって、将棋を通じてのだろうと思うけど、将棋を四局とか五局やっているなら、話は出来るけれども、まして一局も指してないんだから、分からないよ。本当のこと言って。

だけども、ぼくが将棋を見ているとね。谷川君はよく手を読むし、将棋も狙いどころがあって強いなあと思う。正直に言うと、経験がまだまだ。足りないと言うんでなく、もっと積まなけりゃいけない大事な時だね。そこから言えば、考えの中にちょっと抜けかなんか、真空状態が起こる。名人戦第一局の時、うまく指して、いい攻めをしてるなと思ったけど、大事な3三銀なんて手を逃しているよ。それで負けちゃっているんだ。あんなところを見ると、平たい言葉で言うと注意力、つまり考え方の周密さが欠けているんじゃないかと思うね。もっともっと何べんも読む必要があるんじゃないかな。そういう事を感じる。指してみれば、もっと分かると思うけどね。

大山さんはもう百戦錬磨だよ。別に言うところもないし、あの人の将棋について今までに言っているし。それと升田君、升田君は少し手の読みについての周密さにちょっと欠けるところがある。それが勝負になっているんじゃないかと思われるけどね。

それから中原君だって、ほとんど会ってないよ。今まで、勘定するほどしか会っていない。ただし、将棋はあの人は古いから、私が時々見ていると、なかなか注意力が行き渡っていていいし、悪くなっても逆境に強いと見うけられる。ただ、勝つ時にスパッと勝つなんていうわけに行かないところがあるけどもね。やっぱり一つの逸材だよ、あの人は。

だから、これから中原、谷川というのが中心になるんじゃないかな。そういう将棋だよ、どっちも。それで、兄たり難く弟たり難しというところが感じられるよ。

今、名人戦が谷川君が三連敗になっているけど、どうも何だねえ。勝負は分からないけど、ここまで押されるとちょっと剣ヶ峰で立ち直るのは骨だろうね。棋風から言って、中原君に周密さがある。つまり考えるところに充実味が出ているね。そういうところが谷川君に骨なんだろうな。

しかし、例え取られたとしても、ぼくが塚田君に負けて取られたやつを塚田君から取り返したんだから、取り返すってことは大事です。しなきゃあだめですよ。取り返すってことは一つの責任だよ。(編注・名人戦が三対〇の時点で対談が行われた。4対2で名人戦終了後に木村十四世名人は、

「今回の名人戦はどちらもよく戦ったよ。出だし三連敗しただろう。やっぱりああなると、谷川君としては骨だよ。

勝負だからね、どちらかが勝って、どちらかが負けるのは仕方がないよ。どっちが強いとかは言えないと思うよ。

中原氏が勝ったのは、やっぱり名人戦の経験の差だろうね。これが谷川君のよき経験になって技量がぐんぐん伸びればと思うね。まだ若いんだから。

ひいきの人はこっち勝て、あっち勝て言うけど、あれだけ戦えばいいじゃないか。三連敗から二番勝って、谷川君としてもよく戦ったよ」)

倉島 それに若いんだもの。二十三歳でしょう。

木村 谷川君にとってこれから先、経験を積んでいかなければならないし、将棋で新しいものを発見していかなければならないだろうね。それが容易でないと思うし、大事なことですよ。

倉島 それとやっぱり、スランプということもありますね。

木村 それはあるね。

倉島 どうにもならないようなことがありますよ。木村先生が塚田さんに負けた時だって、何か時代がね。それまでのオーソリティみたいなものがだめになったでしょう。あの時代は催眠術みたいに何かあったなあ。そんなはずがないんですけどね。

木村 関係なさそうだね。

勝負の面白さ

倉島 いろんなことがありましたけど、木村名人というのは何かドラマティックでしたよ。打倒木村で、升田さん、大山さんがかかって行って。昔の勝負と現在のを比べると昔の方が、大げさだけど命がけという感じがしますね。木村先生の場合もそうだったけど、大山-升田戦もぼくなんか見ててすごかったですよ。あの二人がやった勝負は。それから思うと、その後のはちょっと上品だけどね(笑)。

木村 ぎりぎりのこれ以上はっていう、真剣味があったね。やっぱりね、棋士は対局に打ち込まなきゃだめだよ。これが第一ですよ。

ぼくなんかも対局がないけれども、やっぱり将棋を勉強しているね。だから、いつかどこかで、対局に見(まみ)えるという時になれば、前よりまた違うところがあるんじゃないかと、そういう気がするんだ。そういう気がするだけで、果たしてやって見て、そうなるかどうかは分からんよ。もう何てったって、対局は目と目を合わせて、相手の面構えを見てやるものと、そうでないのとは違うよ。盤面に向かって見るのとそうでないのとでは違うよ。

相手を見る。それに作戦も考える。いろんなものが出てくるんじゃないかな。そこに勝負の面白さがあると言えばあるわね。

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以前も書いたことだが、私が将棋に興味を持ち始めた小学校3年か4年の頃(大山康晴十五世名人が名人の時代)、母が「将棋には、木村名人と大山名人という偉い人がいる」と教えてくれた。

母は将棋に詳しくはなかったのだが、木村名人と大山名人の名前を知っていたわけで、当時の日本人にとって木村名人と大山名人の知名度は非常に高かったということがわかる。

特に木村義雄十四世名人は引退してから15年以上経っていた頃であり、本当にすごいことだと思う。

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角換わり腰掛銀の木村定跡、戦前「木村不敗の陣」と言われた相掛かりの銀歩三戦法など、木村十四世名人が編み出した定跡は多い。

「近代将棋」では休刊になるまでの53回、漫画「木村義雄十四世名人物語」が連載されていた。

最終号でまだ青年編だったので、続いていれば200回を超していたかもしれない。

今度、じっくり読んでみよう。

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