一昨日に続いて大山康晴十五世名人の話。
今日は、見るだけでイヤになるほどの、大山名人の二枚腰。
将棋世界昭和47年新年号付録「将棋千夜一夜」(全棋士が一人二頁で会心の一手または大ポカなどを載せていた)、加藤一二三八段(当時)の「思い出の一手」篇より。
今の加藤一二三九段なら絶対に自慢の一手を載せていると思うが、当時は、敗れた一局を載せていた。それも自身の手ではなく相手の一手。
それほど印象が強烈だったのだと思う。
1967年王将戦第1局、加藤一二三八段(先)-大山康晴王将戦。
大山王将の中飛車に対して、加藤一二三八段の巧妙な攻めが決まって飛車得の局面。
私が後手なら、戦意喪失している。
ここで大山王将は△3六歩。
たしかに、このまま▲3七銀△同と▲同竜となると後手に楽しみが全く無くなるので△3六歩…
はじめてこの局面を見たときはビックリしたものだった。
こんなに耐えなければいけないなんて。
以下、▲6一飛△4七歩▲9七角△4八歩成▲6四角△同歩▲6二銀。
一見決まったように見えるが、ここからも大山王将の辛抱強い受けが延々と続く。
△5二角▲7一銀△同金▲2一飛成△5八と▲同金△6二金打▲3三桂成△4一歩。
気がつくと、大山陣はかなり堅くなっている。
以下、156手で大山王将の勝ち。
振飛車党の私が見ても、イヤになりそうな、悪い夢に出てきそうな受けだ。