12月28日、17:40。浅草駅から将棋寄席が行われる浅草木馬亭へと向う。
途中、浅草寺を通る。
私は浅草寺の入り口に立つと、いつも高倉健を思い浮かべてしまう。
東映映画「昭和残侠伝」で、高倉健演ずる花田秀次郎が着流しを着て浅草寺の大提灯の前に立つ姿。
「エンコ生まれの浅草育ち」で始まる、高倉健が歌う主題歌「唐獅子牡丹」が頭の中で鳴り響く。
エンコは浅草のことで、浅草公園の公園を逆さ読みにしたものらしい。
「昭和残侠伝」シリーズは私が最も好きな映画のひとつ。
- 昔気質のヤクザ、花田秀次郎(高倉健)が復員(あるいは出所)してくる
- やはり昔気質の組(テキヤなど実業系)へ戻るが、新興勢力のヤクザが縄張りを荒らし始めている
- 秀次郎が戻って組は活気づくが、新興ヤクザに老親分が殺されてしまう
- 仕返しを主張する組員(松方弘樹、梅宮辰夫、津川雅彦など)を秀次郎が抑え、実業の仕事(マーケットへの商品卸しや岩採掘など)に邁進しようと説く
- 新興ヤクザの客分に風間重吉(池部良)がいる(敵対する関係にない場合もある)。花田秀次郎と風間重吉には、過去からの経緯あるいは様々な接点の中から微妙な友情が生まれ始める。
- 新興ヤクザの無法振りは目に余るものがあり、秀次郎の組の若者が何人も殺されたり、多くの露天商たちが商売をしていたマーケットを焼かれたりする。
- 仕返しを主張する組員(この頃は梅宮辰夫などはいない)を抑える秀次郎。「バリッとしたでっかいマーケットを建てて、首を長くして待っているみんなを喜ばせるのがお前たちの役目だ 」
- とは言いながら、花田秀次郎は一人で新興ヤクザに殴り込みをかけようと決意する
- 元は惚れあっていたものの、今ではなさぬ仲の女性(三田佳子、藤純子など)との別れ。「行かないでなんて言えないわね」、「あとのこと頼みますよ。でっけえマーケット作っておくんなさい。お達者で」
- 一人で殴り込みに向う秀次郎。「唐獅子牡丹」の曲が流れる。とにかく格好いい。
- 「唐獅子牡丹」の一番が終わり曲が一旦止る。
- 柳の木の下で待つ風間重吉。「秀次郎さん。あたしも行かせてもらいますよ」「そいつはいけねえよ。風間さん。せっかく妹さんにも会いなすったんだ」「やつは一足先にむこうで待っててくれてますよ」「…そうですか」「秀次郎さん。ここであんたを一人で行かしては、風間は一宿一飯の渡世の仁義も知らないやつだと世間の笑いものになります。男にしてやってください」「……」
- ここから、殴り込みに向かって歩く二人の姿。「唐獅子牡丹」の二番が流れ始める。一番のときよりも音量が大きくなる
- このシーンが超感動。最高の場面。日本の美が凝縮されている。
- そして殴り込み。
- 敵は全滅するが、風間重吉は闘いの途中で必ず死んでしまう。秀次郎は満身創痍ながらも必ず生き残る
シリーズ全般いろいろなバリエーションはあるが、基本的にはこのような様式美に貫かれている。
私は高倉健とともに池部良の大ファンでもある。
池部良さんは晩年、文筆家としても活躍している。とにかくエッセイが面白い。
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池部良さんは、私が子供の頃から活躍していた俳優だったが、注目したきっかけは、1990年代半ばの日本経済新聞「私の履歴書」。1ヵ月間、毎日面白い文章だった。
「昭和残侠伝」を好きになるのは、その後のこと。
高田宏 前・将棋ペンクラブ会長も「昭和残侠伝」を絶賛されており、それを聞いた時、とても嬉しくなった。
ちなみに、池部良さんが演じた風間重吉、バトルロイヤル風間さんの本名と一字違いである。
つづく
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