日本将棋連盟女流棋士会「駒桜」のサイトの各女流棋士のプロフィール欄で、”36の質問”が行われており、質問25に「行きつけ・おすすめのお店は?」 というものがある。
全員が質問25に答えているわけではないが、回答があったそれぞれの女流棋士の行きつけ・おすすめの店を、これから数日間かけて探訪してみたい。
第1回目は関根紀代子女流五段。
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関根紀代子女流五段の行きつけ・おすすめの店
→小岩の和食(はし本)
はし本は、関根紀代子女流五段の地元に近い東京都江戸川区南小岩の懐石料理店。
はし本の店主は、若い頃、京都の文化・風土に強く惹かれ、大学在学中にもかかわらず東京から京都へ居を移した。そしてすぐ京料理の繊細な魅力にとりつかれ、料理の世界に入ることになる。
その後、大阪、兵庫の料理店を経て東京へ戻り、山菜料理、懐石料理を学んで独立、はし本を開店した。
素材そのものの味を生かした京料理を中心に、江戸野菜の小松菜料理のコースなども用意されている。
[主なメニュー]
おまかせ懐石 15,750円
懐石 10,500円
花懐石(月替わり) 6,825円
野点弁当 3,150円
江戸小松菜コース 5,250円
花籠弁当(ランチのみ) 1,260円
→料理の写真
※花懐石(月替わり) 6月の献立
【先附】 ゼンマイの白和え
【前菜】 ~梅雨景色~
穴子寿司
浜防風お浸し
枝豆と海老のすり身揚
フルーツトマトサラダ
豆乳豆腐
【お椀】 蕨の信田巻き
【お造り】 とり貝又はつぶ貝 鮪 鯛
【焼物】 鮎の塩焼き
【強肴】 夏野菜の胡桃ソースゼリー掛け
【焚き合せ】 久世茄子 干し筍
【お食事】 稲庭うどん
【フルーツ】 びわゼリー
【甘味】 あじさい白玉
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さすがは関根紀代子女流五段。東京東部の奥座敷にある本格的懐石料理店という雰囲気の店だ。
都心から離れた場所にある本格的な店は、間違いのない場合が多い。
関根茂九段とご一緒に行かれているのだろう。
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懐石料理というと思い出すことがある。
あれが私が25歳の頃。
いつもお世話になっているお客様から食事の招待を受けた。
本来こちらが接待する立場なので、事前に、費用はこちらで持ちますと言ったのだが、お客様は首を縦に振らない。
そういうことで連れて行っていただいた店が、西新宿にあるミニ懐石料理店だった。
いわゆる気軽に食べることができる懐石コース。
懐石料理と同じように、ひとつひとつ料理が運ばれてくる。
話もはずみ中盤、羊羹を厚切りにしたような直方体の形をした、鮮やかな緑色をした料理が出されてきた。上には白味噌が乗っている。
涼感あふれる、何かの葉野菜のゼリー寄せかなと思った。
ちょうどテーブルへ女将さんが挨拶に来ていた。
「この料理、涼しげでとても綺麗ですね」
私は思った通りの感想を述べた。
「ありがとうございます。嬉しいですわ。どうぞお召し上がりください」
私は「葉野菜のゼリー寄せ」を箸で持ち上げ口へ運ぼうとした。
しかし、目に近づくにつれて、その直方体の料理は「葉野菜のゼリー寄せ」ではなく、細かく刻んだ沢山のキュウリを前後上下左右から圧縮して直方体にした料理であることが判明した。
私の苦手な三大食べ物は「キュウリ」「生のトマト」「里芋」だ。
女将さんもお客様もニコニコと私のほうを見ている。
ましてやお客様にご馳走をしていただいている場だ。
ここで箸を戻すわけにはいかない。
私は決死の思いで、圧縮キュウリを丸ごと口に入れた。
それから飲み込むまでのことはあまり覚えていない。
食べ終えたあとは胃と食道が震えていたと思う。
ビールを一気に飲み干し、心を取り戻してから言った。
「、、、な、なかなか美味しかったです」
お客様と女将さんの笑顔だけが救いだった。