将棋マガジン1988年6月号、大内延介九段の「大内流振り飛車穴熊指南」より。
対局に盤駒かかせないのと同じに、対局場そのものも、実は大きな要素なのである。
だから地方での対局の場合、関係者は、対局場にことのほか気を使う。タイトル戦は、大抵その地方の旅館なり、ホテルがあてられるが、なにはともあれ静かなことが条件だ。対局中に宴会の嬌声が聞こえてくるようでは困る。身を削るようにして考えている時、
「アーチョイナ、チョイナ」
などという唄声を聞くのは最も辛いものだ。
実は私が中原名人に挑戦した時、同じようなことがあった。庭でビアガーデンが開かれており、その音声が対局室に聞こえてくる。イラ立ちを抑えるのに苦労したものだ。
しかし対局者はたいていの場合我慢する。主催者側によぶんな気を使わせたくないし、トラブルより、まず将棋だからだ。
対局者としては、配慮が行き届き、それでいて、その配慮がわざとらしくない旅館が最もありがたい。
”ギンギラギンにさりげなく”などという変な歌があったが、ちょうどそんな具合がいい。
たとえば、お茶をいれかえてくれる女性が極度に緊張していると、棋士は敏感にキャッチしてしまう。衣ずれの音まで気になりだすのである。
だから対局場は、どうしても慣れた旅館ということになる。何度も使う旅館は主催新聞社の担当記者が黙っていても、すべて大丈夫。対局室係の女性も心得たもので、繁く出入りしても風景のようなものになってしまう。この感じがありがたいのである。
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「ギンギラギンにさりげなく」は、1981年9月30日にリリースされた近藤真彦さんの4枚目のシングル。 作詞:伊達歩、作曲:筒美京平。
「覚めたしぐさで熱く見ろ」、「命懸けても知らんぷり」などの歌詞が出てくる。
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銀座や六本木などのクラブやキャバクラが”ギンギラギンにさりげなく”では困るが、ホテル、旅館、レストラン、バーなどは”ギンギラギンにさりげなく”が理想形だろう。
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”ギンギラギンにさりげなく”の反対は”いぶし銀のケレン味”になるのだろうか。
”いぶし銀のケレン味”、かなり疲れそうだ。
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