将棋世界1990年9月号、青島たつひこさん(鈴木宏彦さん)の「駒ゴマスクランブル」より。
谷川対佐藤。王位戦第2局が今日からこの登別温泉で始まる。このところ、番勝負で負け続けている谷川としては、なんとしても勝ちたい勝負である。
前夜祭。谷川は毛ガニ攻撃に苦戦しながらも落ちついた様子を見せていた。
佐藤は「緊張しています」といいながら、初めてのタイトル戦を楽しんでいる様子。
前夜祭のあと、佐藤五段と王手将棋をしたら、いきなり4連敗。おかしい。王手将棋だけは自信があったのに。
この対局場のホテルには、「ほとんど混浴」の露天風呂がある(男風呂と女風呂の間にほとんど境がない)。
露天風呂には生まれて初めて入ったという佐藤「そうか・・・。メガネを持ってくるべきでしたね」。しかし、残念なことに女性客はいなかった。
23日朝。生まれて初めて和服を着たという佐藤が対局室に登場。
仕立下ろしのウグイス色の着物が本当に初々しい。「佐藤・生まれて初めてシリーズ」の第2局が始まった。
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さっそく、この登別温泉のホテルがどこなのか調べてみた。
1990年王位戦第2局が行われたのは、「登別温泉郷 滝乃家」。
各トラベルサイトでの口コミ評価が非常に高い老舗旅館だ。
そして露天風呂。
当時から変わっていないのかどうかはわからないが、現在でも、男性露天風呂の湯舟の端に行くと、池越しに女性露天風呂が見えるという(逆も真)。
ただし、池越しなのでちょっと遠いらしい。
当日は、女性客がいなかったということだが、滝乃家には他にも素晴らしい風呂がいろいろとあり、そちらの方に女性客は入っていたと考えられる。
温泉自戦記→極楽な日々「登別・滝乃家のお風呂たち」
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1月13日に行われた王将戦第1局の前夜祭、佐藤康光王将は、「掛川は掛川茶やフルーツが有名でして、中でもキウイが名産と昨年知りました。私自身、キウイが好物でして印象に残りました。それで今日はネクタイをお茶やキウイの色に合わせてきました」と語っている。
佐藤康光王将が、生まれて初めて着た和服の色がウグイス色。
キウイもウグイス色だ。
この頃から、佐藤康光王将とキウイを結びつける運命の糸が紡がれていたのかもしれない。