作家の常盤新平さんが1月22日に亡くなられた。81歳だった。
→直木賞作家で翻訳家の常盤新平さん死去、小説「遠いアメリカ」 (スポニチ)
→直木賞作家の常盤新平氏が死去 (産経ニュース)
常盤新平さんは、故・山口瞳さんの弟子筋に当たる直木賞作家で、将棋が趣味。
そのような関係で、将棋ペンクラブ大賞最終選考委員にもなって頂いた。
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常盤新平さんが将棋ペンクラブ大賞最終選考委員を務められたのは、第8回(1996年)から第17回(2005年)までの9年間。
私が将棋ペンクラブ大賞最終選考会のテープ起こしをやるようになったのは2004年からだったので、2回だけ、最終選考会での討議を間近で聞かせていただいたことになる。
朴訥とした雰囲気と内面の洒落た雰囲気が同居している、というのが私にとっての常盤新平さんの印象だ。
常盤新平さんの、将棋ペンクラブ大賞最終選考会での言葉を振り返ってみたい。(敬称略)
1996年
私は江國(滋)先生のおっしゃる欠点がかえってよかったと思います。それに一所懸命なところがいじらしい。女性が書いた観戦記という点も評価したい。
→観戦記部門佳作となった、ほんまゆみ「レディースオープン・清水-長沢)
1999年
やるせないところがいいじゃないですか(笑)。「あれから十年、私が古希を迎えたごとく、谷川の上にも十年の歳月が流れた」なんて、いいじゃないですか。
→観戦記部門部門賞となった、原田康子「第46期王座戦第4局 谷川浩司竜王-羽生善治王座)
2000年
『聖の青春』です。10年に1度という傑作じゃないかと思いました。感情過多のところはありますが、違和感なしに読める。一気に読みました。大崎さんは、割と村山さんに対して冷たいんですね。村山さんが相談に来ても、突き放したりしている。そのへんも隠さずに書いている。森さんの人柄も面白い。
→大賞となった、大崎善生「聖の青春」
2001年
石橋さんの「生きてこそ光り輝く」は一気に読みました。午後から読み出して、夕方に読み終えた。去年は「聖の青春」が大賞でしたが、今年はこれかなという感じがしました。石橋さんの、この明るさは素晴らしいですね。
→大賞となった、石橋幸緒「生きてこそ光り輝く」
2003年
大賞にふさわしいんじゃないでしょうか。書き下ろしでしょう。河口俊彦の晩節のひとつになりましたね(笑)。
→大賞となった、河口俊彦「大山康晴の晩節」
2004年
私は若島さんは3.5としました。手数が短かった関係なのか物足りなく感じました。鈴木さんは本当にうまいんですけれど、書き慣れているという感じで迫力に欠けるんですね。4にします。湯川さんのは、ですます調なんかがあって、スポーツ報知の読者にアピールするような面白さがありますし、ゴシップもあったりして面白いので4.5をつけました。斎藤さんは面白いと思いました。ただ饅頭の話には抵抗を感じましたので4としました。岩船さんのは面白いんですけれども後味があんまり良くない感じがしまして、3.5にしました。
→観戦記部門候補作への論評
2005年
常磐 私が優をつけたのは高野さん(秀行五段・当時)の観戦記です。哀愁があって自己主張も少なくて良かったです。両対局者をよく観察しています。それと上野さんが良。そのほかは全部可でした。
(中略)
司会 観戦記で引っかかる言葉というのは、ものすごく他が良くても減点の対象になるようですね。
常磐 そうです。一つの言葉を丁寧に扱った方がいいですね。将棋に緊迫感があるのは当たり前なので、緊迫感という言葉はあまり使わないほうがよいかと。
田辺 言葉の重なりもよくないね。
川北 裏返せば、すごく印象的なワンフレーズが入ってくると、結構印象に残りますね。
田辺 言葉はたくさん並べなくてもいいんだ。
常磐 ある評論家が、一頁に同じ言葉を3回繰り返していましてね。評論家でもこんなことをやるのかと思いました。
(以下略)
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常盤新平さんは岩手県水沢市の出身だが、小学校から高校まで仙台で過ごした。
高校は仙台二高。
・・・第一志望だったけれども、私が受験して落ちた高校だ。
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去年の12月初旬、常磐新平さんと羽生善治竜王・名人(当時)の2003年に行われた対談をブログでとりあげた。
興味深く、とても面白い対談だったから、記事にした。
あらためてリンクを貼りたい。
合掌
〔2003年の常盤新平さん-羽生善治竜王・名人(当時)対談〕
羽生善治竜王・名人(当時)「こんどは説明しなくてもいいんで、よかったなと」
名人戦の打ち上げ後の羽生善治名人(当時)と森内俊之九段(当時)
「あの二人が検討をはじめると、いつまでたっても終わらないんだよ」
羽生善治竜王・名人(当時)「ただ、私たちの世代がずっとつづくとは思えませんね。二十年後もつづくというのは異常です。他人事のようですけど」
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