19:15
技術部門大賞の森信雄七段のスピーチが始まった。
森信雄七段は1993年の一般部門佳作「風景 御蔵島行」(将棋世界)、2001年の著作部門技術賞「あっと驚く三手詰め」に続いて、今年の技術部門大賞「逃れ将棋」が三度目の受賞となるが、贈呈式への出席は今回が初めて。
「棋士総会があっても東京へ出てくることのない私ですが、今回の受賞はそれほど嬉しかった」
このような言葉を聞けた時が、将棋ペンクラブの幹事をやってて良かったと感じる一瞬だ。
森信雄七段はよほどのことがなければ東京へ来ることはないという。
2年に一度の棋士総会は委任状を他の出席棋士へ渡せば事実上の投票はできる。
1990年代に森信雄七段は日本将棋連盟の理事を務めていたので多忙を極めていたのだと思うが、1993年の贈呈式の様子が書かれている。
将棋世界1994年1月号、大崎善生編集長(当時)の「編集部日記」より。
11月11日
ペンクラブ大賞贈呈式に出席。私は森さんの代理、野口は羽生竜王の代理。どう考えても私が竜王の代理が自然だと思う。本誌からは昨年の内藤九段に続き2年連続の受賞は嬉しい限り。森さんの連載は読者からも頗る評判がいい。私も大好きなページの一つだ。そうではあるけれど、やっぱり野口君の胸にさがる羽生竜王のリボンがうらやましい。トホ。
羽生善治竜王(当時)は、「羽生の頭脳5 最強矢倉・後手急戦と▲3七銀戦法」で著作部門特別技術賞を受賞していたが、竜王戦七番勝負の対局日程と重なり、贈呈式参加とはならなかった。
森信雄六段(当時)の代理が大崎善生さんというところが面白い。
森信雄七段からは、「逃れ将棋」ができるまでの数々のエピソード、新しい著作への様々なアイデアがあることなどが語られた。
技術普門優秀賞の杉本昌隆七段からは、
・受賞はとても嬉しい。今回の受賞は「杉本流相振りのセンス」だけということではなく、今までの相振りの著作七作に対してのものと思っている。
・とはいえ、優秀賞は棋戦でいうと準優勝。せっかくなら優勝を目指したかったなとも思ったが、敬愛する森信雄七段と技術部門で同じ期での受賞だったので、そのようなことが吹き飛んでしまうくらい嬉しかった。
・森信雄七段には、奨励会の頃、非常にお世話になった。よくご馳走もしてもらった。夕方近くになると、森さんの傍に寄っていったものだった。
・相振りの著作は七作目だが十作目まで目指したい。
などの話があった。
19:25
受賞者の記念撮影。
非常に盛況な記念撮影。
19:30
パーティーが始まる。
乾杯の音頭は、天野貴元さんの師匠の石田和雄九段。
「皆さんも乾杯をお待ちだったでしょうから、さっそく乾杯しましょう」
と、ストレートに乾杯の発声をするような流れ。
(あっ、石田九段の話もたくさん聞きたいのになあ)、と思った瞬間に、「でもですねえ」と、手に持つ扇子を開き始める。
絶妙のフェイント。大向うから「いしだーー」と声がかかりそうな瞬間だ。
扇子は石田九段一門の扇子で、そこに天野さんの署名も入っている。
天野さんが名人になった就位式に呼ばれることを夢見ていたけれど、ジャンルが変わってこれもよし、など天野さんへの言葉、奨励会時代の森信雄七段のこと、甥弟子の杉本七段のこと、などの話があって乾杯。
これからも、もっともっと石田節が聞きたい。
19:35
会場は大賑わい。
私はウイスキーの水割りを飲み始める。
話は戻るが、受賞者スピーチの最中、会報編集担当の鷲北さんから「今度の会報に贈呈式のことを書いてもらう方を探しているんですが、誰かいい人はいますか?できれば女性で」と相談を受けていた。
「だったら、あそこの黒い服の女性、Fさんがナイスですね」と長嶋監督風に答えたのだが、原稿依頼も私がすることになった。
Fさんにお願いすると、快諾していただけた。
19:38
この辺りからは、飲んでもいたので、前後関係や時刻がかなり不確かになってくる。
19:40
多くの方が、受賞者との写真を撮っている。
森内竜王、森七段、天野さんと並んだ夢の組み合わせ、石田九段と杉本七段の板谷一門の組み合わせ、森七段、片上六段、室谷女流初段の森一門の組み合わせなど、様々なバリエーション。
幹事を長くやっていると、来場された方々が楽しんでいたり喜んでいたりする姿を見ながら酒を飲むのが、何よりの楽しみとなってくる。年をとったからかもしれないが…
19:42
バトルロイヤル風間さんから写真撮影を頼まれる。
バトルさんは誰と写真を撮るのだろうと思ったら、安食女流初段、室谷女流初段、渡部女流初段と一緒。
バトルさんは、とてもとても嬉しそうだった。
19:45
安食総子女流初段と渡部愛女流初段による指導対局が開始される。
20:00
7階の喫煙室から戻ってくると、来場の棋士による祝辞が始まっていた。
神谷広志八段、今到着したばかりの三浦弘行九段、窪田義行六段、片上大輔六段、上野裕和五段、室谷由紀女流初段、将棋世界の田名後健吾編集長からお話をいただく。
20:12
三浦弘行九段にご挨拶をする。
三浦九段は、壇上で「自分の対局が将棋ペンクラブ大賞になるのは嬉しいけれど、今まではいつも負けた対局ばかり。今度は勝ちたいと思います」と語っている。
私が話す前も三浦九段を女性ファンが取り囲んでいたし、話した後も、違う女性ファンが三浦九段に話しかけていたので、三浦九段の女性の中での人気はうなぎ登りのようだ。
三浦九段は、北野新太さんと杉本七段のお祝いに駆けつけた。
杉本七段は三浦九段にとって研究相手ばかりでなく、非常に尊敬する先輩。
数年前のNHK杯戦(杉本-三浦戦)で、三浦八段(当時)は対局前のインタビューで次のように話していたほどだ。
「杉本七段には公私にわたってお世話になっています。棋士である前に、人としてどうあるべきか意識させられる、最も尊敬する先輩の一人です。人間性では遠く杉本さんに及ばないので、将棋くらいは勝ちたいですね」
会の終盤は、三浦九段と杉本七段は二人でずっと話をしていた。研究会の打ち合わせかもしれない。
20:30
中締め。
例年は湯川博士さんの三本締めで終わるのだが、今年は湯川博士さんの指名により、天野貴元さんにやっていただくことに。
三本締めの予定がひょんなことから三三七拍子になったが、大いに盛り上がっての閉会となった。
第26回 将棋ペンクラブ大賞贈呈式(天野貴元ブログ「あまノート」)
皆様、ありがとうございました。
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当日、ご出席いただいた方々のブログ。