谷川浩司王位(当時)「昔は、嫌いというよりダメだったんです。いまはダメというより嫌い」

将棋世界1987年11月号、故・池崎和記さんの「帰ってきた前進流 タイトル奪取なった谷川新王位」より。

 谷川新王位は「超」がつく”売れっこ棋士”だ。しかし、その割りには日常や嗜好は意外なほど知られていない。某月某日、新王位に連想ゲーム風の質問をぶつけてみた。さて、王位の素顔は…。

Q.どんな服装が好きですか。

A.スーツ。ネクタイを締めてるほうが気が楽だから。

Q.ラフな格好は、ふだんでもしない?

A.あんまり。遊びに行くときも結構、ネクタイをしたりして(笑)。

Q.洋服と和服、どちらが好きですか。

A.対局のときは、いったん着てしまえば着物のほうが楽です。

Q.スーツは何着もっていますか。

A.よくわからないけど、たぶん夏物、合い物、冬物がそれぞれ十着ぐらいずつあるんじゃないでしょうか。だから全部で三十着。

Q.いつもバッグを持ち歩いていますが、何が入っているのですか。

A.扇子(清新)と、家の鍵と、ティッシュペーパーと、レジャー用のメガネ。

Q.どんなジャンルの本が好きですか。

A.将棋の本(笑)。たまに推理小説。

Q.最近、読んで面白かった本は。

A.『百万ドルを取り返せ』

Q.神戸はどんなところが好きですか。

A.ウーン、難しいな。自分が住んでいるから(笑)。新幹線で京都辺りまで来るとホッとしますね。もうすぐ神戸なんだなァって。

Q.ホッとする街ですか。

A.はい、でも本当の意味でのんびりできるのは家が一番です。

Q.東京は好きですか。

A.現在のように月に2、3回のペースで行く分には好きな街です。

Q.住もうとは思わない?

A.住むとなると、ちょっと…。そういう気はないですね。

Q.最近、泣いたことはありますか。

A.いいえ、心で泣いたことはあります。

Q.「青春」って何だと思いますか。

A.ちょっとそれは…、パス。

Q.朝、昼、晩の典型的な食事のメニューを教えて下さい。まず朝食から。

A.パンと紅茶。コーヒーより紅茶のほうが好きなので。朝早く起きたときはサラダも。それから食事の後は必ずフルーツを食べます。

Q.昼食は。

A.メン類が多いですね。

Q.夕食はどうですか。

A.肉を食べることが多いですね。

Q.エビとカニは、いまでも嫌いですか。

A.昔は、嫌いというよりダメだったんです。いまはダメというより嫌い。もうジンマシンは出ないと思います。

Q.パーティーは好きですか。

A.それほど苦にならないですね。

Q.一番、落ち着く場所は。

A.自分の部屋。

Q.おカネは好きですか。

A.アハハ。嫌いな人はいないでしょう。

Q.カネ遣いは荒いほうですか。

A.どうでしょうね。一度ゼイタクを覚えると、なかなか…(笑)

Q.いま、サイフの中にいくら入っていますか。

A.えーと12、3万円くらい。東京に行くときは20万円くらいになりますけど。

Q.対局が終わった後の夜の行動は。

A.まっすぐ家に帰ることはほとんどないですね。勝ち負けにかかわらず。

Q.飲みに行くのですか。

A.ええ。でも一人でお酒を飲んだりはしませんから、誰かがいればですけど。誰もいないときは仕様がありませんから、そのまま家に帰ります。

Q.人間は好きですか。

A.いろんな人がいて、面白い。

Q.どんなタイプの人間が好きですか。

A.自分自身が割りにマジメなタイプだと思いますから似たタイプの人。

Q.嫌いなタイプは。

A.仕事に対していいかげんな人は嫌いです。遊びに対してはいいかげんはある程度かまわないと思うのですが。

Q.現在、もっとも関心のある人は。

A.将棋年鑑にもそんな質問がありましたね。去年はマジメに「米長先生」と書いてしまった…。えーと「自分」と答えてもいいですか。

Q.自分をどんな性格だと思いますか。

A.将棋とは全然反対。将棋だと、わからないときは踏み込むのですが、将棋以外のことだと、わからないときは引っ込んでしまう。こういう性格は直さなければいけないと思っています。

Q.結婚するとしたら、どんなお嫁さんがほしいですか。

A.(考え込んでから)家にいて、勝負のことを忘れさせてくれるような、明るい人。そして、頭のいい人。

Q.条件はそれだけですか。

A.いえ、キレイで、しかも芸能人らしくないタイプの人がいいですね。

Q.芸能人で言えば、誰に似たタイプ?

A.鳥居かほり

Q.年齢や身長はどうです。

A.僕と同じ年の人。でも、22歳から25歳までの人なら、それでもいいです。身長は160センチくらい。

Q.もし、いままでの条件に合う女性が現れたら結婚する意志はありますか。

A.(小さな声で)はい。

Q.将棋の駒の中では何が好きですか。

A.角と桂馬。

Q.詰将棋はだれの作品が好きですか。

A.上田吉一さん。それと若島正さん。

Q.自分では対局数がどれくらいあるのがベストだと思いますか。

A.毎月平均して対局があるのなら、年間76局でも86局でも僕は構わないのですけど、週に1局半がベストだと思います。月に12局とか、週に3局とかいうのは、ちょっとシンドイですね。週2局でもいいのですが、でもそれが1年間続くとシンドイ。

Q.いままで影響を受けた棋士は。

A.たくさんいます。

Q.「一人あげろ」と言われたら?

A.中原名人。私の修行時代からずっとトップですから。ナンバーワンという意味で。

Q.「10年後の谷川浩司」はどうなっていると思いますか。

A.いま本当に競争相手が多いから、何年先というのは全然読めないですね。

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この時から数えて「10年後の谷川浩司」(=1997年)は、一時は無冠になったものの、竜王・名人となって永世名人の資格も得ている。

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11月3日、谷川浩司九段の紫綬褒章受章が内閣府から発令された。

平成26年秋の褒章(内閣府)

将棋界での紫綬褒章は、木村義雄十四世名人(1960年)、升田幸三実力制第四代名人(1973年)、塚田正夫名誉十段(1975年)、大山康晴十五世名人(1979年)、二上達也九段(1992年)、加藤一二三九段(2000年)、米長邦雄永世棋聖(2003年)、中原誠十六世名人(2008年)に続く将棋界で9人目の受章となる。

受章時年齢は、木村十四世名人が55歳、升田実力制第四代名人が55歳、塚田名誉十段が61歳、大山十五世名人が56歳、二上達也九段が60歳、加藤九段が60歳、米長永世棋聖が60歳、中原十六世名人が61歳、谷川九段が52歳。

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それにしても、池崎さんの踏み込んだ質問がとても絶妙だし、谷川九段の回答も非常に率直。

同じ質問を他のたくさんの棋士にもしてほしかった、とつくづく思う。