近代将棋1988年12月号、武者野勝巳五段(当時)の「プロ棋界最前線」より。
同じく10月号の特集座談会、「言ってみれば大波がきて小波で返すパターンがあるわけで、今年はカムバックもしくは力を溜めていた者がチャンスを掴みそうな気がします」 この発言の後、田中(寅)棋聖位奪取、森(雞)王位奪取、中原王座復位と図らずも中年族の巻き返しが続いたのだから、私もやるもんでしょ。
(中略)
以前に、自戦記の中で20代にタイトルホルダーが集ってしまった要因を
- 将棋が盛んになり底辺の広がりが頂点を押し上げた。
- 底辺の広がり現象は30代棋士の子供の頃から始まったが、棋士の社会的地位が低く、谷川俊昭さんを始めとするプロ棋界からの頭脳流出があった。
- 将棋をとりまくマスメディアの発達により、ここ10年で10倍ほどの情報が入手できるようになった。
―などと整理したことがあった。
この情報、プロ棋士の場合は棋譜が主だが、この分析が新人類は驚くほど上手で、「数多くの棋譜から棋風の分析をすれば、終盤の勝負手の放ち方まである程度推察することができる」と語る若手棋士もいる。
試験のヤマを当てるのが得意な同級生を想像できようか。こうして実績を残していくうちに、やがて地力がついて本物の優等生の誕生である。一方、オジさん先生達は考えた。出題の傾向を変えてみようと。まあ将棋の場合、からくりが分かっていても地力がなければそううまくは行かないのだが、田中(寅)、森(雞)、中原がこの条件に見事合致したということが言えようか。
田中(寅)、森(雞)、中原、この三人の共通項が分かりますか?それは血液型がB型であること。B型の特徴は楽天的で好奇心旺盛、物事の対応が早く立ち直りも早い。どうです!三人の復調の原因を血液型に求めるこの強引さ。
(以下略)
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中原誠王座(40歳)、森雞二王位(42歳)、田中寅彦棋聖(31歳)の頃のことなので、今の感覚でいうとあまりオジさんという年齢には感じられないのだが、谷川浩司名人(26歳)、高橋道雄十段(28歳)、南芳一棋王・王将(25歳)、塚田泰明前王座(23歳)、福崎文吾七段(28歳)、中村修七段(26歳)、島朗六段(25歳)の時代。
まだ、羽生世代がタイトル戦を席巻する前の時代のこと。
この頃の現役棋士では大山康晴十五世名人もB型。
この文章を書いている武者野勝巳五段(当時)もB型だ。
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昨日の竜王戦第5局で、糸谷哲郎七段が森内俊之竜王に勝ち、竜王位を獲得した。
糸谷哲郎竜王は1988年10月5日生まれ。
糸谷竜王は、ちょうど、武者野五段が上記の原稿を書いていた前後の頃に生まれたことになる。
米長邦雄十段(当時)と島朗六段(当時)が戦った第1期竜王戦第1局は、糸谷竜王が生まれた翌週の10月13日から行われている。
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血液型と将棋が関係あるかどうかは別として、この2年の間に20代でタイトル戦に登場したのは、糸谷哲郎竜王、豊島将之七段、中村太地六段の三人で、三人とも血液型がB型。
26年前とは年代的に逆のパターンのB型棋士の逆襲という流れ。
B型の棋士のタイトル獲得は、1997年の屋敷伸之棋聖復位以来、17年ぶりのこととなる。
ちなみに、糸谷竜王の師匠の森信雄七段もB型だ。
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〔糸谷哲郎竜王関連ブログ記事〕