将棋世界2001年9月号、飯島栄治四段(当時)の「創作次の一手 解答と解説」より。
最近、映画のビデオを借りてたくさん観たので、映画の話をしたいと思います。くだらないですが、自分の主観で映画を2つに分けました。
対局の前日に観てもいい映画。「マトリックス」「バトルロワイヤル」「交渉人」など。対局前にテンションを上げるならアクションが多い作品がおすすめ。
逆に、対局の前日に観てはいけない映画。「ショーシャンクの空に」「船の上のピアニスト」「ダンサーインザダーク」「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」など。この中で自分が一番切なくなったのは「ショーシャンクの空に」でした。どれも涙モノで切なくて良い作品ですが、対局前日にテンション下げちゃダメダメ。対局に負けて泣けば良いのにその前に泣いてどうすんだって感じっす(笑)。
他にも良い作品がいっぱいあって紹介できないのが残念。みなさん、感動映画「涙モノ」があったら教えてくださーい。
(以下略)
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昨年の11月にアマゾンプライムに加入してからというもの、時間のある時には見放題の映画を観ている。
深作欣二監督の作品に集中した時期があるので、「バトルロワイヤル」と「バトルロワイヤル2」は観た。
自分があの中の生徒だったら、どのような行動をとっていただろうと、とても考えさせられる映画だった。
教師役はビートたけしさんだが、武田鉄矢さんというキャスティング案もあったという。
武田鉄矢さんだったなら、また印象の違った映画になっていたのだろう。
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テンションを上げるということでは、飯島栄治四段(当時)が書いている通りアクション系。
個人的には、スティーヴン・セガール主演の映画がかなり効果的ではないかと思う。
スティーヴン・セガールの映画は、テロリストや犯罪組織などによって周りの状況はどんどん悪くなっていくものの、中盤から終盤にかけての主人公のセガールの活躍により、悪の集団が殲滅されるという図式。
セガールは敵の攻撃を受けても全く平気でほとんど無傷、滅茶苦茶強くて、なおかつピンチらしいピンチが訪れないので、何も考えずに安心して見ていることができる。
同様に、日本の『必殺シリーズ』も良いかもしれない。
後半に大逆転の勧善懲悪型で、主人公にあまり危機が降りかからないスタイルの映画。
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たしかに、感動的であったり泣けたり、という映画は対局日前日には不向きであるという感じはよくわかる。
対局の最中にも、頭の中に感動的なシーンや泣けるシーンが浮かんでくる可能性がある。
ちなみに「ショーシャンクの空に」といえば、羽生善治三冠の好きな映画。
佐藤康光九段は「カサブランカ」。
木村一基八段は「ニュー・シネマ・パラダイス」。
みな、対局日前日には不向きな映画ばかりだ。
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1月のある土曜日、NHK杯戦(準々決勝 千田翔太六段-佐藤康光九段戦)の観戦記を書き始めるために午前4時頃に起きた。
ふと、書き始める前に感受性を活性化させておこうと考え、アマゾンプライムで映画を観ようと思い立った。
選んだのは、今まで見たことのなかった「ゴッドファーザー」。
3時間の長さだが、見終わるのが7時頃だしまあいいか、という感じだった。
ところが、見始めたら映画に釘付け。あっという間に3時間が過ぎていた。
こんなに素晴らしい映画だったのか…とビックリ。
自分の中では洋画部門で「ニュー・シネマ・パラダイス」と並ぶ洋画部門1位タイとなった。
感受性を活性化させるどころか、見終わった後も頭の中は「ゴッドファーザー」だらけ。
ネットで「ゴッドファーザー」のことを調べ尽くしているうちに午前11時30分。
PARTⅡも3時間以上の作品だが、すぐに観なければと思い、「ゴッドファーザーPARTⅡ」も観始める。
PARTⅡはPARTⅠに勝るとも劣らない作品。いや、泣ける量ではPARTⅡに軍配が上がる。
特に、序盤の、自由の女神の前を移民船が航行する33秒間は1年分の涙が出るほど。また、有名な「愛のテーマ」が流れるシーンはPARTⅠ、PARTⅡとも悲しい場面ではないのに涙が出てくる。
「ニュー・シネマ・パラダイス」もそうだが、悲しいことを描写しているシーンではないのに泣けてくるのが素晴らしい映画の条件なのかなと思ったりした。
結局、観戦記に着手したのは19時頃からになったが、これほど映画に感動させられたのは久し振りで、なかなか良い一日だった。
もちろん、「ゴッドファーザー」シリーズも対局日の前日には絶対に観てはいけない映画だ。