観戦記

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江國滋さんの観戦記(5)

[第9譜] 盤上、二転三転 いわゆる”初王手”というものを必要以上に珍重するのはヘボ将棋の通有性である。初王手目のクスリ、とうれしそうに口走ったりして。 プロは、そんなものにはまったく意味を認めない。 だが、好手の3六桂に続く谷川の4四桂(...
観戦記

江國滋さんの観戦記(4)

[第7譜] 都大路の挑発 すわ急戦か?控室をのぞいたら、森けい二八段と目が合った。 「どっちをモチたい?」 形勢をどう思うかというときに、将棋界では「モチタイカ」という。ヘンな日本語。 ウーン、まだわかんないなあ、と答えた森八段は、ひと呼吸...
観戦記

江國滋さんの観戦記(3)

[第5譜] 童顔よみがえる 二日目。新緑の向こうに雪をいただいた富士山が、くっきりと顔をのぞかせている。薄曇りのせいか、芦ノ湖の色が、きのうよりも濃い。 (中略) 時計をにらんでいた記録係の飯田四段が、きっぱりとした声で告げた。 「加藤先生...
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江國滋さんの観戦記(2)

[第3譜] 構想の練り合い 「東京地方に大雨強風注意報発令」と報じられるカーラジオの耳を傾けながら、小田急新宿駅に向っているときには、決戦にふさわしい空模様だ、と思った。 初登場の挑戦者がいきなり三連勝、あわやというところで踏みとどまった名...
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江國滋さんの観戦記(1)

随筆家であり俳人で、将棋ペンクラブ大賞最終選考委員だった故・江國滋さんによる名観戦記。(1983年名人戦第6局、加藤一二三名人-谷川浩司八段戦。谷川新名人誕生の一局) 随筆家ならではの視点と表現が秀逸だ。 観戦記では、棋譜の解説部分と情景・...