「詰将棋」カテゴリーアーカイブ

二上達也棋聖(当時)出題、「30分で解ければアマ名人クラス」の懸賞詰将棋

将棋世界1982年7月号、野口益雄編集長(当時)の編集後記より。

 四段コースの受験者は約4,000人ですが、5月号の3題正解者がただ一人というのには仰天しました。出題棋士によって難問ぞろいの月がありますが、たった一人とは初めてです。

 前月号も関根八段が「ボクの力の限界の会心手の問題集だよ」という難問いっぱいの月だったので次号の発表を今から心配しています。

 今月号の出題は西村七段です。「私は読者の味方ですよ、安心しなさい」と胸をたたいておられたが、さあ、どうなるやら。

 難問といえば、二上詰将棋空前の難題「30分でアマ名人クラス」が出ました。傑作なんですが幾人応募者がありますかナ。

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将棋世界1982年7月号、二上達也棋聖(当時)の「懸賞 詰将棋」より。

30分でアマ名人クラス

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この当時のアマ名人は小池重明さんだが、「30分でアマ名人クラス」の詰将棋と聞いて、かえって闘志を燃やす人と、はじめから諦める人と、大きく二つに分かれると思う。

詰将棋が苦手な私は当然のことながら後者。30分でアマ三段でも諦める。

しかし、この回は応募総数1,784通、正解数627通(正解率35.1%)と、いつもよりも反響が大きかったという。

それにしても、アマ名人クラスが日本に627人もいるとは思えないのだが、普段は応募しないような方々も気合いを入れて解いたのかもしれない。

正解は、解説付きでここから少し下にあります。

 

 

 

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将棋世界1982年7月号、二上達也九段の「懸賞詰将棋解答」より。

〔解答〕

▲5二飛△3二金合▲3一角△同玉▲4二馬△同金▲4三桂△2二玉▲4二飛成△3二飛合▲3一銀△1三玉▲1二金△同飛▲同竜△同玉▲3二飛△1三玉▲2二飛成まで19手詰。

 7月号の編集後記に「空前の難題」とあって、皆さんファイトを燃やしたらしく、応募ハガキは沢山ありました。

 あるプロ高段者が「詰まないネ、こういう実戦型に近い形の作は奇抜な手はないはずだが……」と首をひねっていました。しかし常識を超す手があったのです。5手目の△4二馬がその絶妙手。

 初手から5手目まで、まぎれが非常に多く、6手目以後はやさしい手順です。

 読者や知人から「解けたゾ」の喜びの電話やら「本当に誤植じゃないですね」の電話やら、いつになく反響の大きい問題でした。なお1五歩の配置は、という質問がありましたが、この歩がないと、▲3一玉△同玉▲4三桂△2二玉▲3一角△1一玉▲3三馬以下の詰みが成立します。(編集部)

 

 

ビルに詰将棋!

将棋世界1995年4月号、「読者が作る声のページ レタープラザ」より。

ビルに詰将棋!

 先日、熊本市の中心部にある金融機関のビルに、詰将棋が出題されていると、地元のNHKで放送がありました。さっそくカメラ片手に見物に行きました。ビルの窓を利用して、7手詰(とアナウンサーが言っていました)の詰将棋が作ってありました。将棋ファンにはうれしい広告です。先着200名の正解者には記念品が出るとのことなので、がんばって挑戦してみようと思っています。

(熊本県 Nさん)

=編集部より=

 写真を見て編集部一同ビックリ。驚きのニュースでした。

写真: DSC_0104
投稿者のNさん撮影の写真

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写真の下の方に「公共料金の自動振替はくましんへ」とある。

熊本県で「くましん」というと「熊本信用金庫」のこと。

豪快で、本当に有り難い企画だ。

多少細長い盤になっているが、局面図にはピッタリなビル。

詰将棋の盤面は次の通り。

ビルの詰将棋

NHKのアナウンサーが言う通り、7手詰め。

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現在の熊本信用金庫本店のビルの窓には、巨大な「くまモン」が描かれている。これもなかなかいい雰囲気。

3一の銀があった辺りにくまモンの左耳がある。

Kumashin_honten

熊本信用金庫ポスター

そういえば、くまモンには日本将棋連盟から初段の免状が授与されている。

ほぼ20年ぶりの不思議な縁なのかもしれない。

くまモンに初段免状授与(日本将棋連盟)

 

芹沢博文九段の1ヵ月で解ければ三段の詰将棋

将棋世界1992年4月号、沼春男五段(当時)の質問コーナー「将棋Qプラザ」より。

Q.詰将棋の解答を

 1図は故・芹沢博文九段の著書に載っていた詰将棋です。

photo (6)

 1ヵ月で解ければ三段、となっていましたが、正解を教えて下さい。

(静岡県静岡市 Fさん)

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このブログで使用しているOCNのブログサービスが明日(11月19日)の午前0時から午前9時までメンテナンスのため、更新などができなくなるとのこと。(ブログの閲覧はできると思います)

月曜から金曜までの平日は午前7時過ぎには記事を更新することを心がけているのですが、明日は午前9時以降の更新となります。

それまでの間、この詰将棋をお楽しみ下さい。

解答は明日の記事で。

若島正さんの一手詰

月刊宝石2002年10月号、湯川恵子さんの「将棋・ワンダーランド」より。

 若島さんは、いくつ解答があるかわからないあの、知恵の輪みたいな人だ。

 将棋のおかげで知り合って、全国赤旗名人や読売アマ日本一戦(現アマ竜王戦)準優勝が私の知る最初の肩書きだったし観戦記者でもあった。

 夫が初めて我が家に連れてきたとき聞いた職業は夜間高校の数学教師。京都大学で数学を学んだ人が、「通分ができない」生徒達との関わりを涼しげな目でおもしろそうに話していた。 次に来た時は分厚い英語の辞書を持っていた。大学院で英米文学をやるという。答えの出ない世界がありそうだから、と。いつかの置き土産はパズル雑誌。洋画の題名で解く巨大なスケルトンがすべて回答済みだった。活字でプリントしたような几帳面な筆跡は、結婚後「嫁さんが孕みまして」なんてハガキでもちっとも崩れない。

 ご当人がお気に入りの肩書きは詰棋作家だった。ある受賞作は超難解な中合い作。空中に角を合い駒したりする。

 図は1手詰み作品。若島さんの作品集「盤上のファンタジア」の第1番。

photo (15)

 本当にたった1手詰み。挑戦してみてください。著書「盤上のファンタジア」は詰め将棋の世界を語ったものだが子供の頃に別れたお父さんのことが底流になっている。ユーモアに隠れて滋味ある文体だ。ちなみに演歌を歌ってもとても巧いですよ。

 外国のプロブレム(詰めチェス)専門誌の解答王として名が載ったのは東洋人で初めてだ。いまやマスターの称号を持つ世界的なプロブレム作家でもあり日本チェスプロブレム協会創設者、今その21号めの機関紙を作っている編集長でもある。

 で、先日受賞したのはなんと本格ミステリー大賞。

 数年前に出た「乱視読者の冒険」は海外の小説を紹介した評論集だが、構成におしゃれな仕掛けが潜んでいる一冊だった。その続編「乱視読者の帰還」が本格ミステリー作家クラブの、評論研究部門の大賞を受賞したのだ。ナボコフからクリスティまで400ページを越える大冊。これものっけから知的な遊びを楽しませてくれる。

 その授賞式にこの欄の編集者オグチ氏も列席したそうだ。彼にとって受賞者は偶然、恩師。本業かどうか、世間的には若島さんの肩書きは現在、京大大学院の教授なのです。

 1手詰み、解けましたか?

▲3七香は不正解。よくみれば図の直前に後手玉が動いたはずがなく、理論的にこれは後手番だから正解は△2八金!

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上図の詰将棋は一見すると▲3七香までの詰みだが、後手△2八金(銀)が正解。

詰将棋はすべて先手番ということになっているが、論理的には、後手が指した後だから、先手が指す番ということ。

ところが上図の局面はどう考えても後手が何かをやった形跡がない。(玉が3七、3六、2八、1七、1八、どこからも動いてこれない)

そういうわけで先手が指した直後に違いないから、ここでは後手番という理屈になる。

詰チェスではレトロと呼ばれる逆算ものだという。

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若島正さんは60歳になった今年、10年続いている「詰将棋解答選手権」の実行委員長を降りた。

「10回でちょうど60歳。かわいい娘のようなもので、いつかは嫁にやらなくてはいけないと思っていました」 と若島さんは語っている。

「詰将棋解答選手権」の歴史と功績(NHKテキストVIEW)

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若島さんの記事を探しているうちに、NHK出版が「NHKテキストVIEW」を始めていることを知った。

NHKテキストビューは、料理や健康、語学、趣味などのNHKテキストの記事を抜粋して紹介している情報サイト。

もちろん、将棋講座のページもある。

NHK将棋講座

非常に素晴らしい企画だと思う。

あくまでタイジェストなので、その記事の本当の面白さを体感するには、NHK将棋講座をお買い求め下さい。

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若島正さんは京都大学理学部数学科を卒業した後、京都大学文学部英文科および大学院文学研究科修士課程を卒業している。

同じような雰囲気の経歴を持つ人がもう一人いる。

俳優の故・成田三樹夫さんだ。

成田三樹夫さんは、東京大学理学部を1年で中退し、山形大学人文学部英文科に入学(3年生の時に中退))している。

成田三樹夫さんも将棋が大好きだった。

盤上のファンタジア 盤上のファンタジア
価格:¥ 1,575(税込)
発売日:2001-07

詰将棋の鬼

超難解長編作品を得意とし、煙詰[父帰る][三十六人斬り]など、空前絶後の名作を残している詰将棋作家の駒場和男さん。

駒場和男さんは1934年生まれ、「詰将棋の鬼」と呼ばれる伝説の詰将棋作家だ。

将棋界の大旦那であり詰将棋作家だった故・七條兼三氏が、次のように語っているほど。

「駒場君のカミさんは美人でねぇ。ミス東京なんとかと言ったな。それがね、駒場君が看寿を超すような煙詰を、ろくに仕事もしないで何年もかかって完成したとき、カミさんも煙のように消えちまったんだ。煙詰のカミさんですよ。あれは…」

湯川恵子さんは七條さんからこの話を聞いて、「煙詰め できたときには 妻も消え」という句を作っている。

実情は定かではないが、一時期の駒場さんは、家庭などかえりみず、まるで鬼人のごとき形相で詰将棋を創っていたと言われている。

今日は、詰将棋に興味のない方でも面白く読める、駒場さんが書いた連載記事を。

近代将棋1991年2月号、駒場和男さんの「詰将棋トライアスロン 亨保に生きる」より。

 煙詰めについても書かなければいけないと思うし、長手数詰についても書きたい。馬鋸や龍鋸や遠打などについても書いてみたい。書きたいことはいっぱいあるけれど、ここらでお茶にしませんか。

 一息入れたくなった。リフレッシュしたわけです。

 しかし何ですね。詰将棋ってのは人の心を惑わせますね。そりゃそうだ。銀子はいるし、桂子もいる。香子もいる。あゆみだって捨てたもんじゃない・

 銀子は一流クラブのナンバーワンホステスですよ。桂子は良妻賢母の感じ、香子は高校教師のイメージですね。

 龍子ってのもいいねえ。お龍のほうが感じがいいかな。そういえば、美女の場合は”おりょう”と呼ぶんだったねえ。一度ホレられてみたいよ。

 好きな駒ということになると、森田正司氏は「銀杏」で、門脇芳雄氏は「芳桂」です。”ギンナン”と読む人もいれば”ホーケー”と勘違いする人もいる。ハハハ。それはともかく、詰将棋作家は銀とか桂とかがお好きらしい。

 では宗看は何が好きだったのか。看寿は何が好きだったのか。ちなみに、私は博愛主義というか、特に好きな駒もなければ嫌いな駒もない。どの駒も平均的に好きである。ということは、それだけ没個性的であるわけですね。

 個性的ということでは、何といっても宗看ですよ。宗看の作品は難解だけれど、難局か解いているうちに宗看の強烈な個性が作意を暗示していることに気付き、それからはそれ程苦労しなくても解けるようになる。

 「無双」と「図巧」をあらためて見る。どの駒が好きだったかという目で見る。1番から100番まで何度も見る。刑事コロンボの執拗さで見る。すると見えてくるんだよねえ。犯罪捜査も現場百回というけれど、まったくその通り、まずわかったのは宗看と看寿の作風の違いであった。

 いやいや、豪放と繊細といったことではない。作り方に関することである。微妙な違いなので言い回しが難しいが、宗看は直線的、看寿は曲線的といったらいいか。宗看は縦線または横線に強く、看寿は斜線に強いといったらいいか。

 作品の比較はナンセンスである。「無双」は先発、「図巧」は後発である。後発のほうがよくて当たり前だのクラッカーである(古いねえ)。

 そんなことより、素晴らしいのは宗看が「百番で一局」の作り方をしていたことである。”全格玉配置”が何よりの証拠です。これは宗看がいかに緻密な頭脳の持ち主かということじゃないですか。

 看寿はこれに倣った。看寿にとって宗看は兄であり、父であり、そして神であったかもしれない。ライバル意識はなかった。15歳のとき「無双」を見せられて以来、宗看に追いつけ追い越せは看寿の命題となった。そして遂に追い越したといっていいだろう。

 宗看と看寿の作風の微妙な違いは好みの駒によるのではないか。ふとそう思った。

 A図は無双30番である。宗看の代表作といわれている。

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 テーマは「左右馬鋸」。宗看は「歩頭馬鋸」(これも代表作)も作っている。すると馬、つまり角が好きなのだろうか。

 B図は図巧1番である。看寿の代表作といわれている。

photo (24)

 テーマは「飛打・飛合」。看寿は「飛鋸」(これも代表作)も作っている。すると飛が好きなのだろうか。

 A図は、左下隅で引いた馬が消え、右下隅で鋸を引いた馬が消える。テーマは確かに左右馬鋸ではあるけれど、その馬が主役という気はしない。むしろ龍ではないのか。龍が主役ではないのか。龍の八面六臂の活躍にこそ宗看の思い入れがあるような気がしてならない。

 C図は無双30番の詰上がり図である。

30_2

 左右対称形もさることながら、龍がしっかり玉を摑んで放さばこそ。それは恰も宗看の化身が龍であるかの如く、宗看は飛(龍)が好きだったのだと思わざるをえぬ象徴的なシーンではないか。

 B図は、遠飛と飛合の繰り返しで1六の角を5六まで送り、9二歩の打歩詰を同角と取らせて打開しようというものである。飛打・飛合がテーマであるのは論をまたないが、その飛が主役のような気はしない。角ではないのか。1六の角が主役のような気がする。その露払いが3六龍ではないのかな。

 D図は図巧1番の詰上がり図である。

photo_2 (17)

 1六角が攻防所を変えて7四に存在している。そしてしっかり玉を押さえている。役者やのうといった感じ。その千両役者振りが看寿とダブる。看寿は角が好きだったのではないか。

 宗看は飛が好き、看寿は角が好き、と一応こじつけてみたけど、どんなものか。

 牽強付会の趣なきにしも非ずかねえ。しかし「無双」と「図巧」を繙いてごらんよ。前者は龍(飛)の活躍が多く、後者は角(馬)の活躍が多いのがわかる。ということは、好みというものは色に出にけりということではないのかな。

 お茶にしませんかが、お茶どころではなくなってしまった。ひとの好みをあれこれ詮索するのは元来好きじゃない。書いていて、しまったと思ったけれど、後の祭り。しかも今月は締切が早いときている。果たして間に合うものやら、間に合わないものやら。折しもTel。森敏宏氏の最速かしらん。

 テレビドラマを見ていたら、主人公の妻の台詞にこんなのがあった。「あたし、やっとあなたと同じ夢見てる」

 昭和に生き、平成に生き、そして亨保にも生きる。私と同じ夢を見ている人はいないものかねえ。

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駒場和男さんの煙詰である「父帰る」は、最初の図面で5五にいた後手玉が、最後にはまた5五に戻り”都詰め(5五で玉が詰む)”かつ”煙詰”になるという、驚愕の作品。

父帰る・・・思い出の煙詰め③  (あーうぃ だにぇっと)

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「あたり前田のクラッカー」は、大阪府堺市に本社を置く前田製菓の1960年代のテレビCMのコピー。

1962年からTBS系(制作は朝日放送)で放映されていた「てなもんや三度笠」の番組内で、主演の藤田まことさんが「あたり前田のクラッカー」と言うのが大ヒットして、日本中このフレーズを知らない人はいないほどだった。


YouTube: Maeda’s Cracker CM

もちろん、現在も「前田のクラッカー」は販売されている。

昔ながらの製法にこだわり、どこか懐かしい味がする名品と言われる。 原料の小麦本来の味や香りを生かす工夫がされたあっさり塩味のクラッカーだ。

野菜クラッカー、五穀たっぷりクラッカー、黒ごまソフトクラッカーなどの種類もある。

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駒場和男さんは寡作であるが、そのぶん凄い作品ばかりと言われる。

2006年に、駒場和男氏による初の詰将棋作品集が出版されている。「無双」、「図巧」と同じく全格玉配置(初形の玉位置が1一から9九まですべてあるもの)となっている。

ゆめまぼろし百番 ゆめまぼろし百番
価格:¥ 3,990(税込)
発売日:2006-06