内藤九段の名講座(2-1)-振飛車党の古き良き時代(20)

将棋世界、昭和46年12月号、内藤国雄八段(当時)の中級向け講座「駒の交換(最終回)」より。前回も書いた通り、将棋ペンクラブ大賞が当時あったら1次推薦したくなるような内容なので、はじめの部分をそのまま引用する。

11月号では「俺は俺、お前はお前」式に取り進む「直接的交換」だったが、今回は「取って取られてまた取って、とめまぐるしく繰り返される交換」。内藤八段は「交換の醍醐味は、『取りつ取られつ』の激しさの中にこそあるように思う」と書いている。

交換電車

さてこの種の一連の交換、いわば交換電車にいとも無造作にぽいと飛び乗ってしまう人がいるかと思うと、割るようするといけないからといって頭から避けてしまう人もいる。

こういう棋風…というよりも気風は稽古将棋などの折、下手の指し口のうちに自ら感じられてきて、上手にとっては一局目よりは二局目、二局目よりは三局目と指し易くなってくるのである。

正しい電車の乗り方、そのコツといったものは何か-それは普通の電車に乗る場合を考えればよい。つまり何処ゆきであるか、そして乗った所と降りる所と。つまり目的地と区間運賃である。わかりやすくいえば、始めと終わりに注意することである。

駒を取ることで始まるか、取られることで始まるか、また終わりの場合はどちらで終わるか。もし取りからスタートしたのなら取られで終わってもよい。もし取られで始まったのならどうしても終わりは取りで下車しなければならぬ。そうでなければ駒損になる。

つまり運賃表をよく見てから乗車すること。それからもう一つは目的地である。下車してから、つまり交換が終わってから、どちらがきびしい「先」を握っているか。

駒損なし、そして「先」ありとなれば、その交換電車に乗らない手はない。

例題1

初期図以下▲2二角成。王手飛車・角が繰り返されて損得はどうなるか。頭の中で追ってみていただきたいものである。・・・とある。

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つづく