中原誠十六世名人の「気」

昨日紹介した「井口昭夫将棋観戦記選集 下の「はじめに」に、井口昭夫さんが2002年に週刊将棋で連載していた「盤側46年 書けなかった話 書かなかった話」で取り上げていたエピソードが引用されている。

1985年の名人戦で、谷川浩司名人に中原誠王将・王座が挑戦したときのこと。

北九州市で行われた第2局の前に、中原王将が珍しく「部屋を替えてもらえませんか」と注文をつけた。井口さんが理由を尋ねても「10年たったら話します」と明かさない。

そこで、井口さんは毎日新聞を定年する直前に、中原十六世名人に改めて聞いた。

「実は人に勧められて、気を入れる先生に術をかけてもらっていたのです。あのとき、ホテルの部屋のベッドに横たわると、気が落ち込むのを感じた。これはいけないと思って部屋を替えてもらったら、それがなくなったのです」

その将棋は中原王将が勝って2連勝を飾り、結果も4勝2敗で中原王将が名人に復帰した。

「盤側46年 書けなかった話 書かなかった話」も、本として出版してほしいものだ。