阪田流向飛車

手損なしで向飛車にできる点が評価され、最近、急激に脚光を浴びている阪田流向飛車。

渡辺明竜王が採用して勝ったり、来月の将棋世界の付録(阪田流向かい飛車戦法 豊川孝弘七段)になるほどの勢い。

元々は江戸時代からあった戦法で、阪田三吉は一度しか採用していないが、勝局が見事であったため”阪田流向かい飛車”と呼ばれている。

今日は、阪田三吉が一度だけ指したその一局を眺めてみたい。

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この対局は、大正8年5月に行われた、土居市太郎七段(先)-阪田三吉八段戦。木見金次郎七段昇段祝賀会での席上対局だった。

「阪田角損の名局」といわれている。

阪田流向飛車の出だしは1図のような好戦的な形。

△2四歩からの逆襲を含みにしている。

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しかし阪田八段は、この後、3三の金を3二に引いて持久戦模様に構える。

江戸時代風の二枚銀は阪田好み。

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ここから阪田八段は5筋、6筋から盛り上がり阪田流の△5四角を打つ。

直接的にすぐに効果が出る角ではないが、いかにも好ポジションの角だ。

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後年、「それは勝負を飛び越えた心。最後を争わぬ心の奥底から投げだされた角だ…」と阪田自身が語った、角打ち。(湯川博士「振り飛車党列伝」より)

この角は数手後に取られてしまう。

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以下、▲5五歩△8一飛▲5四歩△8六歩▲8八歩△5四銀。

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角を取られる間に、8筋を圧迫した。

ここから阪田八段の猛攻が続いて、阪田八段の圧勝となる。

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阪田三吉らしい将棋だが、振飛車らしくない将棋でもある。

せっかくの阪田流向飛車なのだから、向飛車のままで金と連携した2筋からの逆襲を見てみたいという方も多いと思う。

振飛車党が思い描く阪田流向飛車、こういう将棋を見せてくれるのが升田幸三実力制第4代名人である。

明日は「升田の阪田流向飛車」。