第22回将棋ペンクラブ大賞最終選考経過

将棋ペンクラブ大賞(第22回)最終選考経過の概略です。

ここでは最終選考委員の討議の結果を極めて簡略に記していますので、詳細な選考過程・討議内容については、9月発行の将棋ペンクラブ会報秋号をご覧ください。

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○観戦記部門

西上心太氏の一押しが原田史郎さん、二押しが先崎学八段と湯川恵子さん。

木村晋介氏の一押しが早水千紗女流二段、二押しが原田さん、先崎八段、湯川さん。

まず原田さんの作品が入賞確定。

先崎八段、早水女流二段、湯川さんの三作品は甲乙つけがたかったのですが、先崎八段の作品は、将棋が途中から一方的になったために、勝負の模様を描く部分よりも女流棋士論の比重が高い作品となっていました。この女流棋士論が素晴らしいのですが、この部分は観戦記というよりも優れたエッセイ的な要素が強く、観戦記部門での他作品との比較という点から、今回は見送りとなりました。

討議の結果、大賞:原田さん、優秀賞:早水女流二段、優秀賞:湯川さん、となりました。

原田史郎は、中平邦彦さんのペンネームです。

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○文芸部門

木村氏、西上氏とも、「井口昭夫将棋観戦記集(上・下)」は文芸部門大賞に充分に値する作品と評価。

そして、木村氏、西上氏とも、同じ軸での比較は難しいものの「シリコンバレーから将棋を観る」が更にその上をいく作品と評価。

討議の結果、大賞:「シリコンバレーから将棋を観る」、文芸特別賞:「井口昭夫将棋観戦記集(上・下)」となりました。

文芸特別賞は、絶対評価では大賞相当となるが相対評価では大賞とならなかった作品への賞という位置付けです。

それほど、大賞である「シリコンバレーから将棋を観る」の評価が高かったということになります。

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○技術部門

木村氏の一押しが「永世竜王への軌跡」、二押しが「必ず役立つプロの常識」。

西上氏の一押しが「永世竜王への軌跡」、二押しが「矢倉の急所2」。

所司和晴七段の一押しが「永世竜王への軌跡」、二押しが「矢倉の急所2」。

討議の結果、大賞:「永世竜王への軌跡」、技術体系賞:「矢倉の急所2」、優秀賞「必ず役立つプロの常識」となりました。

「矢倉の急所2」は体系書として秀逸であるため「技術体系賞」として賞が贈呈されます。

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○特別賞

[Web中継企画賞]

株式会社北海道新聞社メディア局

北海道新聞の王位戦・女流王位戦ネット中継は、多くの観る将棋ファンから喜ばれました。特に2007年7月から開始された中継ブログは、マスコミ人ならではの視点から、対局地の背景、舞台裏情報、食事情報、様々なエピソードなどが数多く盛り込まれ、ネット中継の一つの手本となるような素晴らしい内容でした。

今年度から王位戦・女流王位戦の中継が日本将棋連盟に移管されたため、北海道新聞による中継ブログは休刊となりますが、ネット中継における同社の功績は非常に大きく、「Web中継企画賞」を贈呈することとなりました。

王位戦の中継ブログ

女流王位戦の中継ブログ

[功労賞]

故・新井田基信 氏

技術部門の選考の際に、最終選考委員より、候補作である「新ニーダの定跡研究」(日本アマチュア将棋連盟)とともに新井田氏の長年の将棋普及活動に対して顕彰をしてはという意見が出され、満場一致で故・新井田基信氏へ「功労賞」を贈呈することが決定されました。