広島の親分(3章-2)

「麻雀・喫茶よしみ」へ戻り、高木さんへの取材が開始される。私は湯川さんのカメラを持ち適宜写真を撮る役。
湯川さんは、事前に取材対象者のことを入念に調べた上で取材に臨む。特に高木さんの場合、10年近く前に重い取材をしているので、取材する内容は最近のことや、事前調査の裏付けを確認することが中心となる。
「雀荘を始められたんですね」
「ここは広島一安い料金にしとるし隣に予備校もあって若い人が沢山来るんじゃ。24時間営業だから、わしも深夜はここ(1階のソファ)で仮眠しとるのよ」
雀荘はかなり流行っているようだ。取材の最中にもお客さんが何組も入ってくるし、1階と2階の間の階段の踊り場からは「点棒足らん」「豚玉4つ!」「コーヒー1つ」など学生が注文を言ってくる。

その都度高木さんは「へいへい」と素早く対応する。愛想は決して良くないが、気の利いた応対だ。

学生が高木さんの前歴を知ったら腰を抜かしてしまうかもしれない。