渡辺明竜王は竜王戦第4局の前夜祭で、二日間とも昼食をかつめしにする宣言をした。
今回の対局は、
・国宝の寺で行われること
・昨年の竜王戦のお寺で行われた対局は全て精進料理だった
ことから、「昼食は精進料理で、かつめしはメニューに入っていない」と私は予想をしていたのだが、一日目の渡辺竜王の昼食はかつめしだった。
私の予想は当たらない…
しかし、ここで気を取り直して、今日も渡辺竜王が昼食で注文するはずの「かつめし」について考えてみたい。
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Wikipediaによると、「かつめし」は加古川市の郷土料理で、1953年頃に誕生した。
ビフカツをご飯の上に乗せ、デミグラス系のソースをかけ、茹でたキャベツを添えた料理が典型的な「かつめし」だ。そして箸で食べる。
きっと、ビーフカツハヤシライス+茹でキャベツのようなイメージなのだろう。
加古川市では「かつめし」をメニューに載せている店が非常に多いが、比較的近い姫路市では「かつめし」を出す店は少数であるという。Wikipediaには、極端にエリアの狭い郷土料理である、と書かれている。
東京で加古川流「かつめし」をメニューとしている店はまだないらしい。
長崎が発祥と言われる「トルコライス」が全国に拡散し、それぞれ全く異なる料理になっていったのとは正反対のパターンだ。
竜王戦第3局で渡辺竜王が3回食べた北海道の「豚丼」は楽天で多種の商品が販売されている。しかし、「かつめし」は楽天では売られていない。それほど局地的な名物料理ということになる。
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かつめしの主張はビーフカツにあるのではないかと思う。
ビーフカツは東京ではあまり見かけないが、近畿地方ではビーフカツが好まれている。
15世紀の頃からヨーロッパではシュニッツェルという子牛のカツレツ料理があったが、日本でも最初のカツは牛肉が主流だった。
しかし、豚肉のほうが安価であり日本人の味覚にも合致したため、昭和4年頃からトンカツが急速に普及しはじめる。
そのような意味でも「かつめし」は、加古川あるいは東播磨の気骨が具現化されたものではないだろうか。
「かつめし」がまだ有名でなかった頃の力強い論文が存在する
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加古川の「かつめし」は一度食べてみたいものだが、現地でなければ味わえない貴重な食べ物だということができる。