12月28日、18:50。浅草駅から将棋寄席が行われる浅草木馬亭へと向う。将棋寄席は17:25から始まっており、今年は遅れての参加。
途中、浅草寺を通る。
私は浅草寺の入り口に立つと、いつも高倉健を思い浮かべてしまう。
東映映画「昭和残侠伝」で、高倉健演ずる花田秀次郎が着流しを着て浅草寺の大提灯の前に立つ姿。
昨年もそうだったが、「エンコ生まれの浅草育ち」で始まる、高倉健が歌う主題歌「唐獅子牡丹」が頭の中で鳴り響く。
エンコは浅草のことで、浅草公園の公園を逆さ読みにしたもの。
「昭和残侠伝」シリーズで風間重吉を演じていた池部良さんは、今年の10月に亡くなってしまった。享年92歳。
浅草寺を抜けて左の脇道に入る。
脇道に入っても「唐獅子牡丹」が脳内で鳴り響く。
いつもならすぐに木馬亭へ到着できるところ、今年は2本違う道に入ったようで、花やしきの前に出てしまった。
軌道修正して19:00、木馬亭に到着。
中に入ると、中入り(休憩)に入ったところだった。
右側最前列の席には、渡辺明竜王、中倉宏美女流二段、船戸陽子女流二段が座っている。
場内ではなぜかアイスモナカを売っていた。
私はバニラにしようか小豆にしようか一瞬迷ったが、バニラを買って空いた席に座った。
中入り後は、バトルロイヤル風間さんの「上の空似顔絵問答」。
舞台に上がった(上げられた)人に、バトルさんがインタビューをしながら似顔絵を描く芸。
例年は客席の中の希望者が舞台に上がる形なのだが、今年はゲストがターゲットにされる。
まずは中倉宏美女流二段。
舞台に上がる時、スリッパに履き替えなければならない。
それを見たバトルさんが「女流棋士が靴を脱ぐのを僕初めて見ました」。
センスの良いファションとスリッパのアンバランスさが非常に微妙だ。
「私は将棋寄席のチラシの似顔絵を気に入っているのですが、船戸さんはそうではないようですよ」。
「い、いや、僕にも好不調の波がありまして…」
のような感じで始まった。
似顔絵が出来上がって中倉宏美女流二段に手渡される。オーソドックスな画風の似顔絵。
二番手は船戸陽子女流二段。
船戸女流二段がバトルさんに逆インタビューのパターン。
バトルさんは船戸陽子女流二段の似顔絵を描くが、バトルさんの中で納得がいかずに3回書き直し。どうやら自虐芸だったようだ。チラシとは異なるテイストの似顔絵が渡される。
そして最後が渡辺明竜王。この日の竜王はカジュアルな服装。
木馬亭がなかなか見つからず、かなりの数の人に木馬亭の場所を聞いたという。
木馬亭は浪曲主体の小屋なので、決して一般的に知られている場所ではない。聞かれた人の中で「あっ、渡辺竜王だ」とビックリした人もいたのではないだろうか。
渡辺竜王は、自分が勝った時の週刊将棋のバトルさんの漫画は、自分がどのように描かれていても楽しく見られると語っていた。やはり勝負師だ。
インタビューをしながらバトルさんが描いたのは、両耳から内側、額から顎の間の顔、つまり顔面拡大型変形似顔絵。
「この似顔絵、僕の鞄に入らない大きさだから、これを持って電車に乗るわけですよね…」
たしかに、大きな色紙に描かれた自分の似顔絵を持って電車に乗ったら、周りの人の好奇の目に晒されることは必至である。
結局、その似顔絵は会場の希望者がゲットした。
将棋寄席のトリは、湯川博士さんの「淀五郎」。
仮名手本忠臣蔵を演じる若手歌舞伎役者の噺。
20:00過ぎに舞台は終了。
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二次会は木馬亭から歩いて3分の居酒屋で。参加者は約30名。
実はこの日、私はtwitterでgabulinkoさんを将棋寄席にお誘いしていた。gabulinkoさんはバレーボールと落語と将棋と走ることが好きな女性。三浦弘行八段のファンでお子さんと将棋を指したりもしている。また、週刊将棋最新号では、小学生への将棋指導の模様を書かれている(バトルさんの漫画の真下の記事)。
それから、当日のtwitterでshiinomi66さんが来場するという情報も得ていた。shiinomi66さんは、山崎隆之七段公認サイトの管理人をされている。
お二人とも二次会に参加の予定だったので、二次会の会場に到着する前に一度ご挨拶をしておこうと思った。
思ったが、今まで面識がなかったので誰がgabulinkoさんで誰がshiinomi66さんかが分からない。
木馬亭の前に立っている女性に一人一人「がぶりんこさんでいらっしゃいますか?」とか「しいのみさんですか?」と声をかけるわけにもいかない。
二次会の居酒屋へ向う途中一人で歩いている女性が、そうである可能性が高いのではないかと思い、探す方法を変更した。
居酒屋方向へ向うと、そのような女性が一人いた。
昭和のアイドル系の雰囲気、ドラマの役柄で言えば野球部の人気マネージャーか。
twitterでの文章の雰囲気などから総合して、gabulinkoさんではないかと直感した。
しかし、「もしかして、がぶりんこさんですか?」と声をかけるのは、違っていた場合の冷や汗とダメージを考えるとやはり躊躇われ、そのうちに居酒屋の入り口に到着してしまった。
入り口にはバトルさんがいた。彼女はバトルさんに「将棋ペンクラブログの方はいらっしゃいますか?」と聞いた。
バトルさんは即座に「この人」。
晴れてgabulinkoさんとの対面となった。
ご挨拶をしてから居酒屋の中へ。席は6つくらいに別れる。
「どのような席がいいですか?」
「落語家の方と近い席だと嬉しいです」
gabulinkoさんを夢月亭清麿さん、三遊亭とん楽さんが座る落語家人口密度の高い席へご案内して、私は当日の写真班みみマルコさんなどがいる席へ。
アイスモナカを食べたせいか喉が渇いている。私にしては珍しくビールを何杯か飲む。
向こう側の席には中倉宏美女流二段、船戸陽子女流二段の姿も。
そうだ、しいのみさんは…。
全体を見渡すと、和服の女性が座っている席がある。
twitterでの文章の雰囲気などから総合して、しいのみさんではないかと直感した。
湯川恵子さんがやってきたので、一緒にそちらのテーブルへ向う。
やはり、しいのみさんだった。
しいのみさんは、女優でいうと40年前の藤村志保さんに似た雰囲気。
銘仙の着物(湯川恵子さんに教えてもらった)が、竹久夢二か泉鏡花の世界を想わせる。
同じテーブルには、羽生善治名人と30年前の森田健作さん(現・千葉県知事)を足して2で割ったような雰囲気のたいがー(tiger391682)さんも。
たいがーさんは、羽生善治名人公認ともいうべき「玲瓏:羽生善治 (棋士)データベース」の管理人。
しいのみさんは「たこやき本舗 山崎隆之七段公認サイト」をやっているので、棋士公認サイトの管理人二人が揃った形だ。
いろいろ席を巡回しようと思っていたが、やはり将棋の話は楽しく、この席にずっと居着くことになる。
やがて、船戸陽子女流二段、バトルロイヤル風間さん、西上心太さんもやってきた。
例年にも増して盛り上がった二次会だった。
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二次会は22:45頃終了。
毎年、このあと近所の居酒屋で自然発生的に三次会が行われる。
バトルロイヤル風間さん、西上心太さん、あっち亭こっちさん、元・ミス荒川放水路のMISAKOさん、gabulinkoさん、私が参加。
gabulinkoさんのtwitterによると、私は「三浦八段や窪田六段のことをブログやtwitterに書くと、決まった人たちがtwitterで反応してくれるのでとても面白い」と話したようだ。
楽しい三次会が終わったのは0:30頃。
皆それぞれ家路につく。
私は、この日飲んでばかりであまり物を食べていないことに気がついた。
まわりを見渡すと吉野家があった。
渡辺竜王が竜王を防衛した時の「飛騨牛丼」とは全く性質は異なるが、久しく吉野家の牛丼を食べていなかったので、入ってみることにした。
牛丼(並)と味噌汁とお新香セットを注文。
牛丼に紅しょうがを乗せ終わった時に、店に入ってきた人がいた。
バトルロイヤル風間さんだ。
バトルさんが頼んだのは牛キムチクッパ。
結局、このあと、またバトルさんと居酒屋へ。
店に入ると、若い女性三人の席の隣だった。
「似顔絵描いてほしい人はいますか?」
と聞きそうになったが、ぐっとこらえた。
バトルさんとは「将棋と落語の関わり」、「twitterによるコミュニケーション構造の変革」、「プロレスの技の力学的衝撃度の考察」などをテーマとする話題で午前5時まで。
長くて楽しい一日だった。