クリスマスキャロルの頃には

将棋世界1997年4月号、三浦弘行棋聖(当時)の連載自戦記「四間飛車対銀冠穴熊」より。

 本局は王位リーグを懸けた、私の兄弟子である藤井猛六段との一戦です。

 先月号で書いた松本佳介四段同様に、奨励会時代に、沢山将棋を教わった先輩でもあります。

 この対局が行われた日は、クリスマスイブに当たり、私にとっては特にこだわる日でもありませんが、新婚の藤井六段にすれば、勝利を奥さんにプレゼントしたいのではないかと想像出来ます。

(以下略)

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三浦弘行棋聖(当時)が、わざわざ「私にとっては特にこだわる日でもありませんが」と書いているところが微妙に可笑しい。

この勝負は、藤井猛六段(当時)が勝っている。

三浦弘行九段も、今年は結婚してから2度目のクリスマスイブ。特にこだわらなければならない日だ。

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今日はクリスマスの話。

といっても、クリスマスの話題にたどり着くのはかなり先の方。

時間があってどうしようもないという方だけ、私の戯言を聞いてやってください。

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1週間ほど前まで、NHK杯戦の観戦記を書いていた。

観戦記を書く時に、音楽を聴きながら書いた方が良いかどうか、聴くとしたらどのようなジャンルの音楽が良いか、ということが今年に入ってからの私の中での探求テーマ。

初春の頃、「佐藤秀司七段-阿部光瑠五段(当時)戦」の観戦記を書いている最中に、Youtubeのミックスリスト(似たような傾向の音楽が数十曲再生リスト化されておりエンドレスで視聴できる機能)を発見し、いくつか聴き始めたのがきっかけだった。

ミックスリストで有り難いのは、今まであまり気にしていなかったような曲に心を打たれて、その曲の良さを気付かされること。

「佐藤秀司七段-阿部光瑠五段(当時)戦」の時には、1970年代から80年代までの歌謡曲を中心としたミックスリストを中心に展開した。その中で再評価したのは「池上線」だった。恋人と別れる女性の切ない心が歌詞に込められており、聴くと涙が出そうになるほど。

しかし、泣いてばかりいては書けないので、追い込みの段階で、アンドレ・ギャニオンのヒーリング音楽に切り替えた。

心安らかに書く作業に集中できるかと思ったら、頭の中に思い浮かぶのはアンドレ・ギャニオンの音楽が使われていた1996年のフジテレビ系ドラマ『Age,35 恋しくて』のことばかり。あの最終回のラストは泣けたなあ、などと、そちらの方に気を取られて時間は過ぎるばかり。

これではいけないと思い、最後は聞いたことのない眠くなるようなクラシック音楽にして、ようやく書き終えることができた。

クラシック音楽が効果的だったかどうかはわからない。全然耳に入ってこなかったので、音楽をかけなくとも同じだったのではないかという疑問が残った。

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夏、「郷田真隆王将-佐藤天彦八段戦」の観戦記を書く時に聴いたのは、昭和50年代のディスコ系の洋楽。ノリが良いので原稿がはかどるかと思えたが、好きな曲が多く、映像を見ながら真面目に聴いてしまうことが多々あり、効果は全くなし。後半はテレビでふと見かけた相川七瀬さんの曲も取り入れるようにした。「恋心」はもともと好きな曲だったが、当時のPVを見て驚いた。ものすごいインパクト。どういう発想をすればこのような作品が作れるのだろう。制作者を尊敬してしまう。

相川七瀬さんのデビュー曲「夢見る少女じゃいられない」も絶妙だ。

ディスコ系音楽あるいは相川七瀬さんの曲は、書くことが捗るかどうかは別としても、元気が出ることが確かであることは確認できた。

ただし、聴いている音楽が作品には影響を与えないことも段々と実感できてきた。

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そして、今回のNHK杯戦の観戦記。(まだ放送されていないので、どのカードだったかは後日お知らせします)

Youtubeにはお気に入りをリスト化する機能もあるので、観戦記に備えて、80曲ほどを登録しておいた。(なお、観戦記を書く時は、ブログの記事もあらかじめ書きだめしておいて観戦記に集中できるようにしています)

しかし、80曲とはいっても、4~5時間で1回転してしまうので、何度目かには違うパターンを求めて、終盤、再び相川七瀬さんのミックスリストに飛び込んだ。

すると、相川七瀬さんと稲垣潤一さんがWinkの「愛が止まらない」をデュエットしているPVを発見。

稲垣潤一&相川七瀬 / 愛が止まらない

稲垣潤一さんの哀愁感漂う声がたまらなく印象的で、あらためて稲垣潤一さんをWikipediaで調べてみると、なんと私と同じ仙台市出身であることを初めて知る。

そうなると、稲垣潤一さんと相川七瀬さんは、仙台の純朴な青年と大阪のヤンキー娘という非常に対称的な雰囲気の取り合わせということになる。

観戦記の終盤は、相川七瀬さんと稲垣潤一さんの曲を中心に聴いていた。

特に稲垣さんの「クリスマスキャロルの頃には」は、じっくりと聴いてみて私の中での評価は急上昇。

他のクリスマスソングと違って、曲調も歌詞も切ないところがたまらなくいい。

やはり、書くことが捗るかどうかは別として、心理的に良いコンディションで書けた思う。

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・・・と書いてきたが、ここまでで得られた結論は、私の場合ということだが、

  • 好きな曲を聴いている間はほとんど書くことができないので、書いている時は音楽は聴かない方が良い。
  • ただし、途中の気分転換には非常に良いので、一息つく時にのめり込まない程度に音楽を聴くことは非常に有効。
  • 聴いている音楽が作品に影響を与えることはない。

の3点。

イージーリスニング系の音楽を選んでいないから、当たり前といえば当たり前かもしれない。

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観戦記を書き終えてから、そういえば、何かのミックスリストを聴いている中で、非常に心に残る曲があることを思い出した。

調べてみると、ハイファイセットの「スカイレストラン」(作詞:荒井由実/作曲:村井邦彦/編曲:松任谷正隆)。

聴いたことはある曲だったけれども、今回、何度も無意識に聴いているうちに、完全に好きな曲に変わっていた。

やはり哀愁を帯びた曲調、とても切ない歌詞。

雰囲気的に1980年代前半の曲かと思ったら、1975年の曲と知ってビックリした。

特に季節は分からないが、歌の中の世界がクリスマス間近の今の時期のことだったなら、悲しさが倍増するだろうなと感じた。

そういうわけで、クリスマス間近の今、私の頭の中では「クリスマスキャロルの頃には」と「スカイレストラン」が鳴り響いている状態。

切ない曲ばかりだが、これはこれで私の好みの問題なので、仕方がない。

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