将棋マガジン1993年4月号、鈴木輝彦七段(当時)の「枕の将棋学’93」より。
麻雀の話。
森内君との対談後、郷田君が待っていると言うので下北沢についていった。
そこには島君や中田(宏)君もいた。昨年は王座戦のタイトル戦で打っただけだったが、久しぶりに打ってみたくなった。
何しろ品がいい。有名私立女子高という感じだ。「あ、それ当たりですけど」と郷田君が言えば、「あ、満貫ですね」とニッコリ笑いながら島君が支払う。「リーチさせて貰います」と中田君が言えば、「私も追っかけを」と二人が言ったりしている。
私達の時代は「おい、それが当たりだ」と厳しく先輩に言われ、たまに「ロン」と言っても「俺がこんな牌を打つ訳ないだろ」と引っ込められた事もあった。極めつけは、二人リーチに困った先輩が、真ん中のスイッチを押して牌を崩してしまった事だろう。
とにかく先輩は偉いから理不尽な事が起きたものだ。ところが、下北沢のグループにはイヤな事が一つもない。
(以下略)
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例えば、子に満貫(8,000点)を振り込んでしまった時に、
「あ、それ当たりですけど」と言われれば、気持ち的には3,000点を失ったくらいの心理的ダメージで済みそうだ。
「あ、」が先頭に付いていることが大事で、単に突然「それ当たりですけど」とだけ言われると、その唐突さから、10,000点を失ったくらいの精神的ダメージになってしまう。
ましてや、「おい、それが当たりだ」と厳しく言われたら、16,000点を失ったようなダメージだ。
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「あ、満貫ですね」、「リーチさせて貰います」も、なかなか言えない言葉だ。
私立有名女子高のような麻雀、私は大好きだ。
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私立有名女子高。
高校の頃はとても気になる存在だったが、高校卒業以降は、不思議と全く気にならなくなるものだ。
女子大生も、大学の頃は非常に気になる存在だったが、社会人になってからは全く興味がなくなってしまった。
そういうのが、大人になっていくということなのだろう。