将棋マガジン1988年8月号、神吉宏充五段(当時)の「ドーン来なはれや 何でも答えまっせ!!」より。
高橋十段婚約! この衝撃はすぐさま関西を光速流で飛び回った。谷川王位はその日、婚約の記事を見たとたん私にTEL「の、飲みに行きましょう」。
そして毎年、12月の第2日曜日はあけとくように、結婚するさかいと冗談で言っていた小坂六段にも飛び火し、真剣な表情で「今年は間違いないで!」とその気宣言。
さらには関西若手数人にも不穏な動きが見られるようになった。
(中略)
今月も読者の皆さんからのいろんな質問が集まりました。さっそく始めるといたしましょうか!
Q.ポスターくでー
”ドーン来なはれ”に質問。6月号に出ていた女流名人のポスター写真もう仕上がったのですか?どうしたら手に入るのか、ぜひ教えて下さい神吉さん。何でも答えられまっか!よろしく。
(東京都清瀬市 会社員 50歳 四段)
A.おめもじかなう日
皆さんこんにちは。窓から外を見ると、お日様が雲の中でお休みzzz・・・。梅雨ってイヤですねえ。
「洗濯物を入れておいてね」カカサマのお声に、何故かハートはゆううつになっちゃうのです・・・。
ブハーッ、疲れた。市っちゃんみたいに書いてみたけど、この数行だけに1時間もかかってもたわ。ああーしんど。
ところで清水女流名人のポスターでっか?そりゃ先月号のカラーグラビアになってましたがな。「おめもじかなう日」って、べっぴんさんに市代ちゃんが出てましたで。入手方法?それも先月号の最後のページ、編集後記の右に5名にプレゼントって載ってましたで。
え、申し込みの締切りがもう終わってるって?そうでんなあ、こりゃ困った。しょうがないから編集部の話でも聞いてちょ。
※将棋会館までお越しいただければ、差し上げます。ハガキに、ポスターの感想を書き添えて『将棋マガジン編集部』あてまで。大至急お申込み下さい。(編集部)
ということです。よろしく!
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清水市代女流名人(当時)のポスターというのは、PARCOのポスターで、雑誌広告にもなっている。(将棋マガジン1988年7月号の広告より)
ポスターの右下には、「おめもじかなう日。 将棋女流名人 清水市代」の広告コピー。
”おめもじかなう日”は、お目にかかることができる日という意味。
”おめもじかなう”は女房言葉(室町時代初期頃から文書に現れ出した、宮中に仕える女房が使い始めた隠語的な言葉)。
Wikipediaによると、女房言葉には、語頭に「お」のつくパターンと語尾に「もじ」のつくパターンなどがあり、”おめもじ”は後者のパターン。
語尾に「もじ(文字)」をつけて婉曲的に言う表現だ。
語頭に「お」のつくパターンで現代も使われる言葉は、「お」+「鰹節」の「か」を2回重ねた”おかか”、「お」+強飯の”おこわ”など多数。
語尾に「もじ」がつくものとして生き残っている言葉は、杓子に「もじ」をつけた”しゃもじ”、惚れるの「ほ」に「もじ」をつけた”ほのじ”など。
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PARCOの広告は非常に奇抜で斬新だった。
テレビCMであれば、イメージ的な映像や言葉が流れ、最後にただ「PARCO」と出るだけ。
新聞広告や雑誌広告、ポスターも同様なコンセプト。
売り込み文句を全く含まず、PARCOのイメージのみを訴求する。
アート性の高いグラフィックと、秀逸な広告コピー。
コピーは、糸井重里さん、仲畑貴志さん、長沢岳夫さんなどが担当した。
代表的なコピーは次の通り。
糸井重里
君の僕は世界一
あそんでねむれ。
本読む馬鹿が、私は好きよ。
仲畑貴志
こんなに憎み合うのは、あんなに愛し合っていたからですか。
荒野に出ることだけが、冒険じゃない。
死んだらどうなるのだろう。考えていたら涙が出ちゃった。
あなたも、わたしも、ちょっとずつ狂っています。
昨日は、何時間生きていましたか。
学校じゃ教えてくれなかったけど、知りたいこと、知りたかった。
目的があるから、弾丸は速く飛ぶ。
賛成1、反対9。どちらも、まちがいじゃない。
長沢岳夫
ナイフで切ったように、夏が終わる。
裸を見るな。裸になれ。
諸君、女のためにもっと美しくなろう。
モデルだって顔だけじゃダメなんだ。
死ぬまで女でいたいのです。
姉は今年こそと、妹も今年こそと、春がゆく。
少年の入り口、夏。少年の出口、夏。
男には、忘れられない女が一人はいる。
清水市代女流名人(当時)のポスターの「おめもじかなう日。 将棋女流名人 清水市代」も非常にインパクトのあるコピーだ。
写真をそのままにして、コピーを、「君の僕は世界一」や「荒野に出ることだけが冒険じゃない」や「裸を見るな。裸になれ」に変えても十分にPARCOの広告として成立しそうだ。
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「PARCOは、PARCOに来た人にとってのファッションショーの舞台である」と、昔、本で読んだことがある。
『パルコの宣伝戦略』という本にも次のように書かれている。
パルコというビルの中に入るまでもなく、その建物が目の前に見えた瞬間から、その人は何気なく背筋を伸ばし、そこに相応しい自分の姿を演出している。気持ちがだんだん高ぶってくる。ファッションしたくなる。もっとエンジョイしたくなる。そんなウキウキできるスペースを創出するのがパルコだ。この理想をかなり高いレベルで実現しているのが、渋谷・公園通りのパルコである。時代の空気や、ファッションの新しいインパクトに敏感な人々が求める”にぎわい空間”がそこにある。
PARCOも店舗数が増えて、1970~1980年代のような超鋭角的な広告は少なくなっているが、1988年当時、女流棋士がPARCOの広告に出たということは、非常に画期的なことだったと思う。
パルコの宣伝戦略 (アクロスSS選書 (5)) 価格:¥ 1,260(税込) 発売日:1984-06 |