将棋世界2003年2月号、鹿野圭生女流初段(当時)の「タマの目・2」より。
今月は「たとえ」をテーマに書いてみたいと思います。
先日、とっても久し振りに田中魁秀九段と仕事で、御一緒させて頂いた。相変わらず軽い口調でポンポンとおもしろい話が飛び出してくる。
田中九段「私も50(歳)過ぎて肝臓をやられてな。いや、ウィルスとちゃうねんで、自己免疫が悪さしよんねん。王さん守ってる駒が攻めてくるわけや」。
タマ「クスクス」
某若手棋士「ハアーッ」
タマにとっては病気のたとえを将棋でする所がおかしかったのに、某若手棋士にとっては、その方が解りやすかったのだろう。妙に納得していた。
★車中にて
神崎七段の車に乗せてもらったら、いつも笑いっ放しになる。
神崎七段「この車、えらい位取りしてる(前に出すぎている)なあ」。
タマ「この道を来たのは序盤の構想に問題があったんじゃないです?」
神崎「それを言うなら車に乗って来たのが悪手だったんですよ」。
タマ「そんな事言うても」。
神崎「まあ、いいでしょう。車に乗ってウロウロするのは嫌いじゃないし、少々回り道しても着けば良いっていう大局観やから」。
神崎さんは将棋を知らない人としゃべる時は普段より口数が減るのかな。
~小休止の我が家ネタ~
息子の佑悟はもうすぐ4歳の超元気者。
佑悟「ママ、信号が味よく青になったで」
タカ「アンタ、それどこで覚えてん!?」
佑悟「ファイト――。イッパーツ(と叫んですでに信号を渡っている)」
やっぱ、タマが言うてんのを聞いたんやろなあ。
★食事
タマ「なんか、色んなもの注文したから、ちょっとずつ残ってしもたねェ」
有森七段「ワシが全部、寄せきってやろっ」
タマ「さすが、有森さん、寄せが速い」
(題名がないと食事中の会話とは思えないでしょ)
(以下略)
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広く使われている将棋用語を用いたたとえの例としては「電車が詰んだ」(終電が終わった)がある。
それ以外にも、
交通渋滞に巻き込まれた時に「捌きが難しい局面だ」、
深夜、もう一軒飲みに行こうという人に「それは指し過ぎだよ」、
女性に対して「あなたは美しい。順位戦で言えばA級クラス」、
など、様々な使い方が考えられる。
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私も、昔はたとえ話が大好きで、よく使っていたものだ。
ある顧客担当者との会話。
顧客「このやり方の場合、先程懸念していたようなことが起きる可能性はありますか?」
私「この方法をとれば、そのようなリスクはありませんね。例えて言えば、A次長(顧客の上司で非常に真面目で実力者)が30秒後にバニーガールの姿でこの部屋に入ってくるくらいの確率の低さです」
顧客「なるほど。安心しました」
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上記の例のように、信頼関係を築いている人には、たとえ話をしても安全だ。
しかし、初対面の人にたとえ話をしてしまうと『変な人』という印象を刷り込んでしまう恐れもある。
その辺のバランスが難しいところだ。