将棋ペンクラブ会報2001年春号、笹川進さんの「A級順位戦最終局裏レポート 打ち上げ編」より。
▲興奮さめやらぬ先崎八段、ビールに口をつけるが、喉を通っていかない。「気が狂いそうだ。普段だって半分狂ってるのに」と、絞り出すようにうめく。顔面蒼白で総毛立っている印象。
△会館泊の青野九段、午前2時頃引き上げようとするが、日本酒を飲んでいる勝浦九段に「まだいいだろう」と止められ、「怖いな」と笑いながら再び腰を降ろす。確かに勝浦九段は存在感十分でコワイ。個人的には勝浦九段は和服が一番似合うと思っている。
▲陥落が決まった田中九段、「加藤さんのA級復帰の記録を破る」と意気軒昂。「だけど加藤さんも数字を伸ばす可能性があるからなあ」に、一同うなずく。
△私が引き上げたのが午前4時。前日の朝9時に会館に着いたから実に19時間いたことになる。で、図面を作って、原稿書いて……。確かに観戦記者は割にあわない。だけど、病み付きになるな、これ。
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A級順位戦最終局の日は、対局後、将棋会館の5階で打ち上げが行われる。
裏レポートの打ち上げ編は、笹川さんが表の記事で既に渾身のレポートをしているので、表の記事と重なる部分が多い。
裏レポートでのみ現れてくるエピソードは、勝浦修九段の「まだいいだろう」と青野照市九段の「怖いな」。
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今年の9月、夜の12時過ぎに新宿の酒場へ行くと、カウンターに一人のお客さんがいた。
ふと見ると、勝浦修九段だった。
カジュアルな若々しい服装。
飲み始めてから15分後、一緒に行っていたGさんが「勝浦先生、昔から大ファンでした」と、勝浦九段に話しかける。
「え、嬉しいな。ありがとうございます」と勝浦九段。
Gさんは、超将棋マニアだ。
自然、私も会話に加わる形となった。
実は私は、1995年に仕事の関係で、日本将棋連盟理事会に対してプレゼンをしたことがある。
その時の理事会は、二上達也会長、大内延介専務理事、勝浦修常務理事、滝誠一郎常務理事、青野照市理事、堀口弘治理事。
大勢対大勢だったので、当然のことながら私の顔は覚えられてはいないが、その時のことを話すと、勝浦九段はすぐに思い出されたようだった。
私にとっても懐かしい思い出の頃。
話も弾み、勝浦九段は1時30頃に帰られたと思う。
私は、勝浦九段が酔った時の口癖と言われる「分かる? 君も二十年すれば分かるよ」を聞きたかったのだが、勝浦九段はとても気分良く飲まれていたので、この口癖は出ることがなかった。
今度お会いするようなことがあったら、ぜひ聞きたい言葉だ。