棋士、それぞれの海外旅行

将棋世界1990年6月号、青島たつひこさん(鈴木宏彦さん)の「駒ゴマスクランブル」より。

 室岡五段と佐藤康光五段は3月中旬から3週間のエジプト旅行に出かけた。羽生竜王、森九段、小野七段、森下六段、森内四段、先崎四段の仲良し6人衆は4月中旬、1週間のオーストラリア旅行に出かけた。2月にエジプトに行った日浦五段は、4月にもギリシアにぶらりと一人旅。海外旅行ブームはOLや女子大生の世界だけではなく、将棋界にも押し寄せている。

(中略)

 朝、将棋連盟に向かう途中で室岡五段に会った。室岡五段は佐藤五段とともにエジプトから帰ってきたばかりだ。

 「いやあ、ひどい目に遭いましたよ」とその室岡五段。「エジプトではどこに行ってもちょっとした計算や数をごまかされるんです。予約しておいたはずのホテルには予約が入っていないと断られるし、仕方なく行った別のホテルでは佐藤君が体調を崩してしまうし。1日に5回も6回も抗議していると、そのうちに疲れてもうどうでもいいやっていう気になってくる。恐ろしい国ですよ」

 そういいながら、「カイロの博物館や王家の谷は素晴らしかった。3週間は短かった。来年は5週間くらい行きたいと佐藤君と話しているんです」ともいう。まあ、多少ひどい目に遭うくらいは旅の楽しみのうちということなのだろう。

 チェスマニアとしても知られる室岡五段は、返りに立ち寄ったロンドンのチェストーナメントで準優勝。賞金約4,000円也を獲得してきたという。さすが。

 「ところで、旅行中将棋は?」と聞けば「佐藤君と二人でいつも研究していましたよ。3週間も駒を触らなかったら、感覚が狂っちゃいますからね」という返事。これまた、さすが。

(中略)

 仲良し6人衆が無地にオーストラリアから帰ってきた。期間が短かったこともあり、室岡・佐藤組とは違ってみんなげんき、元気。

 「いやあ、オーストラリアはなにもかもでかい。圧倒されました。あんな国と戦争しちゃいかん」

 おじさんみたいなせりふは森下六段。

 「食べものがおいしかった。肉はでかすぎたけど、マッド・クラブという蟹がおいしかった。値段? 小野先生にごちそうになったので、知りません」

 にこにこ、森内四段。

 「ギャンブル? 行ったガジノがどうもぶったくりカジノだったみたいで・・・。みんなやられたみたいですね」

 冷静に小野七段。

 「将棋の勉強? ありえません。帰ってきてから、すぐに名人戦は並べて見ました。面白い将棋でしたね」

 きっぱりと、羽生竜王。

(以下略)

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エジプトのミネラルウォーターは硬水に近いため、日本からの旅行者は体を壊すことが多いという。

また、エジプトでは、タクシーの値段はもちろん土産物などの買い物まで、定価があってないのが普通で、値引き交渉が必須となるようだ。

虎穴に入らずんば虎児を得ず、のような心構えが必要なのかもしれない。

最近は更新されていないようだが、懇切なエジプト旅行ガイドのホームページもある。

エジプト好き4人組のエジプト旅行ガイド

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オーストラリアのマッド・クラブは、ワタリガニ科の大型のカニ。

濃厚な味で美味しいらしい。

マッド・クラブ自戦記→オーストラリア名物マッドクラブを味わいました★

谷川浩司名人(当時)はエビ・カニが大の苦手なので、絶対に食べることができない。

マッド・クラブ↓

オーストラリア旅行については、将棋世界の同じ号で、先崎学四段が旅行記を書いている。

森研究会七人旅

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海外旅行といえば、森信雄七段もはずすことはできない。

将棋世界1990年2月号、森信雄五段(当時)の「創作 次の一手 解答&解説」より。

 インドのある観光地にて。

 体調をくずしていたところに、宝石屋のインド人が来て、「どうした。大丈夫か。そこへ座ってお茶でも飲め」

 いつもと違うぞ、変だなあと思っていたら、「この宝石は安い。是非買っていけ」 「今頭が痛くて、それどころじゃない」と私。「判っている。買っていけ」

 何考えているんだ、このおっちゃんはと、呆れるやら感心するやら……。

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「判っている。買っていけ」

迫力と破壊力のある言葉だ。

森信雄七段が出演・MCの「インドぶらりひとり旅」という番組があってもいいと思う。

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