A級順位戦最終局一斉対局(2012年度)

今日は、A級順位戦最終局一斉対局。

今期は、挑戦者も降級も一人も決まっておらず、

・挑戦者争い

・残留争い

・来期に向けての順位争い

の全てがポイントとなる。

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名人挑戦

挑戦の可能性を持つのは羽生善治三冠と三浦弘行八段。

・羽生三冠が勝てば、森内俊之名人への挑戦が決まる。

・羽生三冠が敗れて三浦八段が勝てば両者によるプレーオフ。

・羽生三冠も三浦八段も敗れた場合、羽生三冠が挑戦者となる。

残留争い

降級の可能性のあるのが、谷川浩司九段、深浦康市九段、高橋道雄九段、橋本崇載八段。

・谷川九段と深浦九段は自力。

・谷川九段が敗れ、高橋九段と橋本八段が勝った場合のみ、谷川九段が降級。

・深浦九段が敗れ、谷川九段と高橋九段と橋本八段の二人以上が勝った場合、深浦九段が降級。

・高橋九段と橋本八段は、負ければ降級。

・高橋九段が勝って、深浦九段と谷川九段のどちらかが敗れた場合、高橋九段が残留。

・橋本八段が勝って、深浦九段と谷川九段と高橋九段の二人以上が敗れた場合、橋本八段が残留。

順位争い

・羽生三冠は、来期名人~2位

・三浦八段は、来期名人~3位

・渡辺竜王は、来期2位または3位

・郷田棋王は、来期3位~5位

・屋敷九段は、来期4位~6位

・佐藤王将は、来期5位または6位

・深浦九段は、来期7位~

・谷川九段は、来期7位~

・高橋九段は、来期7位~

・橋本八段は、来期7位~

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今年は、囲碁・将棋チャンネルでA級順位戦最終局全局の完全生中継が行われる。

囲碁・将棋チャンネルホームページ

解説は、森内俊之名人、藤井猛九段、先崎学八段、木村一基八段、中村太地六段

聞き手は、上田初美女王、矢内理絵子女流四段、鈴木環那女流二段、藤田綾女流初段、室谷由紀女流初段

それぞれの対局にキャッチコピーが付けられている。(左側の棋士が先手)

「天国と地獄 ただひとすじの光を求めて」 橋本崇載八段-羽生善治三冠戦

「竜王VS棋王 2手目△8四歩の存在意義」 渡辺明竜王-郷田真隆棋王戦

「勝利必須 挑戦権と残留にのぞみをつなぐ」 高橋道雄九段-三浦弘行八段戦

「絶体絶命! 棋士人生をかけた戦い」 屋敷伸之九段-谷川浩司九段戦

「4度目の正直 不名誉なジンクスを打ち砕け」 深浦康市九段-佐藤康光王将

いずれも、名コピーだ。

渡辺-郷田戦以外は、挑戦あるいは降級に直結する戦いばかり。

渡辺-郷田戦にしても、来期の順位はもちろんのこと、棋王戦への影響もある重い一局。

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解説・聞き手陣が見るA級順位戦最終局のページもある。

解説者の多くが注目している対局が、羽生三冠-橋本八段戦と谷川九段-屋敷九段戦。

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また、同じページで、それぞれの解説者・聞き手が「わたしにとっての順位戦」を語っている。

皆、実感のこもった思いばかり。

その中で、森内俊之名人の思い出が次のように書かれている。

一局一局が本当に長丁場で、一瞬の強さよりも長く戦える強さ。それが必要な棋戦だと思います。 私も16才でプロになり、長い間、順位戦で戦ってきて、うれしい思いも悔しい思いもしてきました。 今でも忘れられないくらい悔しかったのは、まだB級2組にいたころのことです。その期では8連勝、順位戦では(前々期から数えて)26連勝していて、快調だったんですが、9連勝を前に連勝を止められてしまって。それはもう悔しかったです。 自分ではそんなつもりはないのですが、どこかで油断していたのかもしれませんね。目を覚まされたような気持でした。その経験があったからこそ、今の自分があるんだと思います。

森内名人にとって、今でも忘れられないくらいに悔しかった一局というのは、今からちょうど20年前(1992年度)のB級2組順位戦の対佐瀬昌優八段(当時)戦のこと。

将棋マガジン1993年4月号の「公式棋戦の動き」より。

 今回のB級2組は森下と森内が快調なペースで飛ばし、ラス前の対局で二人の昇級が決まる可能性大となった。

 控え室は見物に来た棋士や報道関係者で大にぎわいだった。

 夜10時45分、順位戦としては早い時間に森下が嬉しい昇級一番乗りを決めた。

(中略)

 この日一番遅くなったのが森内-佐伯戦。既に陥落の決まっている佐伯だが、この日は特に気合いを入れて対局に臨んでいたようだ。

photo (32)

 図から▲6五歩△同歩▲6四歩が好手筋。先手に一歩でも渡すと▲5五歩で銀を殺さ終わってしまうため、森内に指す手がない。

 森内の悲壮な表情はとても正視できるものではなかった。この結果逆に村山が自力となった。

 何と重い順位一枚だろう。

ラス前まで、

順位5位の森下卓七段(当時)が8勝0敗。

順位20位の森内俊之六段(当時)が8勝0敗。

順位19位の村山聖六段(当時)が7勝1敗。

ラス前で、

順位5位の森下卓七段が9勝0敗。

順位19位の村山聖六段が8勝1敗。

順位20位の森内俊之六段が8勝1敗。

最終局で、

順位5位の森下卓七段が9勝1敗。

順位19位の村山聖六段が9勝1敗。

順位20位の森内俊之六段が9勝1敗。

森内六段が頭ハネを食って、森下七段と村山六段の昇級が決まった年の話だ。

順位戦にはドラマがある。

今日はどのようなドラマが生まれるのか。