とても優しい郷田真隆五段(当時)

将棋世界1995年7月号、大崎善生編集長(当時)の編集部日記より。

5月23日(火)

 編集部の紅一点、土方が将棋に燃えている。ヒマさえあれば、三手五手詰を解き、そして、相手をみつければ「ねえ、将棋しよっか」とぶつかっていく。天野、野口、村井、と気の弱い我がスタッフは皆犠牲になった。手合は六枚落ち。そして、この日はとうとう、あろうことか棋界のプリンス郷田五段がつかまった。対局が終わり土方-野口戦を見学していた優しい郷田さんが、見かねて指導して下さったのだ。六枚落ちで二局教わり(下手連勝!!)、その上二人で中華料理をごちそうになったという。そういえば日曜日は、アマ女流名人戦にまで突撃、Cクラスで2勝2敗とビギナーにしてはいい成績だった。偉いもんだ。

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ここに登場する土方さんとは、「将棋世界」でデザイン・レイアウトを担当していた土方芳枝さん。

土方芳枝さんは、故・中野英伴さんから一任されて、写真集「棋神」に掲載する写真を選んでいる。

それほど、中野英伴さんや大崎善生さんからの信頼が厚かった。

中野英伴さん

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郷田真隆五段(当時)の優しさが感動的だ。

同じ社団法人の棋士と職員という関係とはいえ、土方さんにとっては、夢のような指導対局となったことだろう。

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8月28日に行われたA級順位戦 久保利明九段-郷田真隆九段戦は、相振り飛車の出だしから久保九段が居飛車に転じ、久保九段の居飛車急戦、郷田九段の三間飛車の戦いとなった。

居飛車党の棋士の振り飛車は重厚な振り飛車となることが多いが、郷田九段は思い切りと踏み込みの良い指し回しで本局を制した。

郷田流が貫かれた華のある振り飛車。

郷田九段が突然振り飛車党に転向したわけではないけれども、これからも郷田九段の振り飛車を見てみたいものだ。

また、そういう意味では、渡辺明二冠の振り飛車にも期待大だ。