将棋世界1996年1月号、神吉宏充五段(当時)の「今月の眼 関西」より。
話は変わって11月17日の将棋の日、関西将棋会館では、これから指導棋士として頑張って行く野間四段の免状授与式があり、夕方からは仲間が集って、彼を囲んで食事会があった。
森・東両幹事をはじめ、十数人の仲間が前途を祝う。私も参加させてもらったが、お祝いの勢いからか、グイグイ飲んでいたようだ。被害を受けたのが隣で粛々とやろうとしていた井上慶太六段。一杯一杯もう一杯、気が付くと二人で騒いで、さあさあみんな二次会じゃ!でカラオケボックスに繰り出した。
途中で連盟から帰るところの久保・矢倉コンビに会ったので「ほらほら、こっちへこんかい(井上)」と強引に引っ張りこんで、カラオケそっちのけでチューハイを飲み出した。
とにかく物凄いペースで飲んでいたそうである。本人は全然覚えていないのだが、野間談によると「50杯以上は飲んでいました」と言う。確かに帰りがけ、広いテーブルの上を見ると、ジョッキの山で下のテーブルの色が見えなかった。私とケイタは泥酔で、久保・矢倉に飲め飲めコールをしていたらしい。
そこで読みの入っていたのが矢倉である。そう勧められると思って、自分たちのテーブルには、こっそりウーロン茶のジョッキを数杯配していたのだ。私は気づかず、そのジョッキを持って久保君に「さあ、先輩のおごりじゃ!ググッといきなさい」とやる。ここで久保がまた上手い。「いやあ、だめです。ボクそんないっぺんに飲めませんよ」 「はっはっはっ、なに言うとんじゃ。同じ加古川出身の仲やないか」で口元にグイッと持って行く。久保君、辛そうな表情で半分飲んで「ああ、酔った」とボックスに倒れ込む。それを見て「ワシも飲まな反則や」と自分のテーブルのチューハイのジョッキをイッキでグググイッ! 酔うた。
久保君、矢倉君覚えとれよ。先輩にこんな姑息なワザはもう通用せえへんからな!「そうじゃ、そうじゃ(井上)」
(以下略)
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神吉宏充五段(当時)と井上慶太六段(当時)の猛攻に対し、読みの入った捌きで対向する久保利明五段(当時)と矢倉規広四段(当時)。
私だったら、(自分のペースでチューハイを飲みつつ、イッキ攻撃が来たときだけウーロン茶を飲もう)と思っていながらも、ついついそのようなことは忘れて、チューハイをどんどん飲んでしまうコースに突入してしまいそうだ。
久保利明五段の演技が面白すぎる。