23時の「佐藤君を呼んでみよう」

近代将棋1990年8月号、鈴木宏彦さんの第13回若獅子戦〔中川大輔四段-佐藤康光五段〕観戦記「驚異の8八角」より。

 真面目、慎重、無口、研究熱心。これが佐藤の外見的な特徴。だが、決して彼は単なる堅物ではない。

 ある夜、羽生竜王や先崎四段が新宿で遊んでいた。時刻は午後11時過ぎ。だれかが「佐藤君を呼んでみよう」といい出した。佐藤の家から新宿まで、電車で50分はかかる距離である。

 佐藤はやって来た。その佐藤を見た仲間の言葉、「あれ、本当に来たんだ」。

 後日、佐藤は怒っていた。だが、もう一度同じことがあっても、きっと佐藤は出掛けて行くことだろう。

(以下略)

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佐藤康光五段(当時)が誘いを受けて新宿に到着するのは午前0時過ぎ。

そのような時間の遊びといえば、酒を飲んでいるか麻雀をやっているかぐらいしか考えられないが、終電も終わり徹夜が必至という前提で考えると、麻雀である可能性が高い。

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佐藤康光九段の律儀で真面目な面を象徴するような話。

鈴木宏彦さんの文章の最後の2行が感動的だ。

佐藤康光九段の若い頃には、過酷な状況下で自宅を出発しなければならないようなエピソードが多い。

佐藤康光九段を語った名文

佐藤康光五段(当時)の情熱