近代将棋2000年1月号、巻頭グラビア「羽生四冠、学園祭に初登場!」より。
11月2日(火)、東京・目白の学習院大学の第30回学習院大学祭の催しで「羽生善治対局&講演会」(主催-大学祭実行委員会中央企画)が行われた。会場には内外から約500人のファンが詰めかけ、2枚落ち四面指しの公開指導対局、ユーモアたっぷりの質問コーナーなど、羽生づくしの将棋イベントを楽しんだ。
〔質問コーナーより〕
Q.どんな子供でしたか?
A.自分で言うのもなんですけどおとなしい子でした(笑い)。自然に恵まれた環境だったので外で遊ぶことが多かったです。
Q.勉強はできましたか?
A.理数系は好きでしたけど他は……(苦笑)。
Q.大学に進学は考えましたか?
A.プロになったときは進学したいと思っていました。その後高校に進学しましたが、月に7~10日は仕事なので、大学に行くのはおろか高校を卒業するのも大変だと実感し、諦めました。
Q.もし大学に入ったら何を学びたいですか?
A.理数系の学部に入って論理を考えるような研究をやってみたいと思います。
Q.パソコンやゲームは得意ですか?
A.イメージ的にゲームやパソコンが得意そうに見られますが、誰かに教えてもらいながらやっています(笑い)。
Q.将棋にはまだ新しい手はありますか?
A.まだ見つけられていない新しい手はたくさんあります。将棋は勝ち負けを争いますが、お互いのアイデア(研究)を試す場でもあります。
Q.何手先まで読んでいますか?
A.1時間考えれば千手以上読んでいます。しかし将棋は変化が多いので、読む必要のない手をどれだけ多く切り捨てられるかでしょう。無駄な手を100手読むより、いい手を5手だけ読む方が重要です。
Q.対局中は何を考えていますか?
A.対局に集中しているときは、指し手のこと以外は何も考えていません。棋士はずっと盤の前で集中して考えていると誤解しているファンが多いのですが、持ち時間の長い対局もあるので常に盤の前にいるわけではありません。集中する波を作り、ときどき席を外して外の景色を見たり、話をしたりして息抜きをしています。
Q.鞄の中身を見せてください
A.(鞄を開ける)扇子、手帳、ペン、カギ、ハンコ、リップクリームが入っていました。
Q.将棋以外で気になることは?
A.妻が無事に(二人目の)子供を生んでほしい。
Q.奥様と将棋を指すことはありますか?
A.教えようとしたことはあります。ただ相手の玉を詰ますことより、囲いを作る方が好きみたいです(笑い)。
Q.お子さんが棋士になりたいと言ったら?
A.棋士になって親子で対局数するのは嫌ですね(笑い)。なるならないは本人の意思ですが、私のカンでは棋士にならないと思います。
Q.将来どういう棋士になりたいですか?
A.50代、60代になっても第一線で頑張れる棋士になりたいです。
(羽生四冠のコメント)
学園祭には今まで一度も行ったことがなかったのでどんなものか楽しみにしていました。予定された1時間半があっという間に終わってしまうほど楽しい催しでした。
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「50代、60代になっても第一線で頑張れる棋士になりたいです」という目標が、とても心強く感じられて嬉しい。
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グラビアには学園祭の模擬店で焼き芋を買っている羽生四冠の写真が載っている。
焼き芋はアルミホイルに包まれている。
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よくよく考えてみると、今世紀に入ってから焼き芋を食べたという記憶がない。どこかの酒場へ行く時におみやげで買っていったのが最後だと思うので、20年以上前のことだ。
焼き芋は最近ではコンビニなどで売っているけれども、当時は軽トラックの焼き芋の屋台でなければ買えなかった。
そういう意味で、羽生四冠が焼き芋を買ったのも、この場を逃すと次にいつ焼き芋を見ることができるかわからない、という気持ちがあった可能性もあるかもしれない。
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ケーキやホットケーキを酒のつまみにしても平気な私だが、焼き芋は酒とは合わないと感じている。
かといって焼き芋はご飯のおかずとしても合わないし、パンに挟んで食べるのも筋が悪い。
やはり焼き芋は、何とも組み合わせず、単体で食べるのが最も美味しいということになるのだろう。