将棋世界1984年6月号、「第9回小学生将棋名人戦 窪田義行君が優勝」より。
小学生の将棋日本一を決める第9回小学生名人戦が3月30日、4月8日の2日間、東京将棋会館とNHK放送センターにて行われ、茨城県取手市寺原小学校6年の窪田義行君が第9代目の小学生名人の座に就いた。
(中略)
準決勝からはテレビ放映のため、舞台をNHK放送センターに移しての対局。ここでもチビっ子たちの早指しペースは変わらず、解説の田中寅彦八段が、指し手を追うだけでフーフー言うほどだ。
準決勝の2局は金沢君と池本君、窪田君と松本君の対戦。いずれも熱戦であったが、金沢君と窪田君が勝って決勝に進出。4年生の松本君は必勝の局面をつくりながら、惜しくも逆転負け。来年またがんばってもらおう。
さて、いよいよ決勝戦。この将棋、持ち時間は10分、切れたら30秒将棋という超早指し戦ながら田中八段も感心しっぱなしの好局である。序盤にちょっと雑なところはあるが、それを除けば県代表クラスの将棋といっても十分通るだろう。若さとは無限の可能性の同義語。ただ、問題はその勢いが止まった時にどこにいるか、だ。
序盤から中盤にかけては金沢君が押し気味の決勝戦だったが、△6六香(1図)を打たれては逆転。
そのあとの窪田君の寄せは実に鮮やかで、その才能を十分に示したといえる。
優勝した窪田君の棋力はアマ四段。学校の友だちや先生には相手がいないから、もっぱら町の道場で腕を磨いているそうだ。将来はプロを目指すとか。
この小学生名人戦の優勝者からは、達正光、庄司俊之、羽生善治と将来を期待される奨励会員が育ってきている。スターへの第一歩を踏み出した窪田君の今後に注目したい。
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窪田義行六段と金沢孝史五段の少年時代の対決。
この対局の棋譜も掲載されているが、先手・金沢少年の初手▲7六歩に対し、後手・窪田少年はなんと△8四歩!
序盤はA図のような展開となった。
昨日、将棋ペンクラブ新年会があり、出席されていた窪田義行六段に聞いてみた。
「あー、懐かしいですね」
そして、小学生の頃の写真(上記掲載)を見て、とてもニコニコしていた。
四段昇段の記で、「私は、四間飛車で勝つため棋界にいる。決して離れることはない!」と書いている窪田六段だが、小学生の頃はこういうこともあったのだ。
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窪田少年の鮮やかな寄せは次の通り。入門当時、師匠の故・花村元司九段に「中・終盤に見所がある」と言われた腕力が見事に発揮されている。
B図以下の指し手
▲3七銀△4五桂▲4七馬△同竜▲同金△3七桂成▲同香△3五桂▲4八金△7五角▲6六歩△4四香(C図)
C図以下の指し手
▲4九歩△4八香成▲同歩△4七歩▲6二飛△4二銀▲4六香△4八歩成▲4三香成△同金▲4四桂△同金▲3三歩△同玉▲2二銀△2三玉▲3九歩(D図)
D図以下の指し手
△2七桂成▲同玉△4五角▲3六香△3五桂▲3七玉△4七と(投了図)まで、154手で窪田少年の勝ち