私が書いた観戦記、NHK将棋講座2012年3月号、第61回NHK杯将棋トーナメント3回戦 畠山鎮七段-三浦弘行八段戦「引くに引けない将棋」より。
対局前のインタビューで、三浦は次のように語った。
「先手、後手、どちらになってもいいように準備をしています。私がどういうことをやるか、注目していただきたいですね」。
しかし、その直後に、「これじゃマズいですよね。撮り直しをお願いします」と、自らNG出しをした。
放送は、先手後手が決まった状態で始まるので、手番が決まっていない前提の話をしては、番組進行上迷惑をかけてしまうのではないかと三浦が思ったからだ。実際には全く問題ないものの、真面目な三浦らしい気遣い。
先手・後手の言及のないインタビューが放送されることとなったが、三浦のこのような真面目さが魅力となって、最近では、イベント会場やツイッターなどのネット上で、女性の三浦ファンが増えている。三浦が挑戦した一昨年の名人戦のBS中継やネット中継がきっかけとなってファンになった女性が多いようだ。
複数の女性三浦ファンの声。
「名人戦での魂を燃やし尽くすような盤上没我の対局姿勢に惹きつけられました」
「息子が指導対局を受けた時にとても優しくしていただき、息子も私もいっぺんで大ファンになりました。息子は机の上に三浦先生の写真を飾っています」
「真面目なのだけれども、何か構ってあげたくなっちゃう」
三浦株は上昇中だ。
(以下略)
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この観戦記が載った号が発売された7ヵ月後の9月中旬のこと。
その日は将棋ペンクラブ大賞贈呈式で、三浦弘行八段(当時)も出席をしていた。
式が終わってパーティーの時、私が三浦八段にあいさつに行くと、三浦八段が「観戦記でウソを書いていただきまして…」と話しかけてくる。
(ゲッ、何か間違ったことを書いてしまったかな)とかなり焦ったのだが、三浦八段は「有難うございました」と続けて言った。
な、なんだろう、
私「どこが違っていましたか?」
三浦八段「私に女性ファンがいるなんて、ウソを書いていただいて有難うございます」
私「何をおっしゃいますか。あの観戦記では三浦八段の女性ファン3人から談話をとってそのまま書いていますから、本当も本当の話ですよ。それ以外にもネットを見ると三浦八段ファンは急増していますし」
三浦八段「いやー、これで『なかなか結婚しないから男性が好きなんじゃないか』などと言われることもなくなると思います」
私「えっ、親戚の方とかから言われるんですか?」
三浦八段「あっ、ダメか。私から女性に声をかけているわけではないから、誤解は解けないな……」
最後の独り言に、思わず笑ってしまったのだが、よくよく厳密に考えてみると、たしかに誤解を払拭はできない。三浦八段の読みはすごいな、と思ったものだった。
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2月13日の三浦弘行九段の誕生日に行われる竜王戦、対羽生善治三冠戦。
三浦九段の復帰第1局となる対局だが、勝負に関係なく、良いドラマが生まれるような感じがする。
楽しみにしたい。