谷川浩司棋聖(当時)「忘れもんですよ、姉ご」

将棋マガジン1993年5月号、鹿野圭生女流初段(当時)の「タマの目」より。

ある宴会が終わって

谷川棋聖「忘れもんですよ、姉ご」

(と言って扇子を差しだす)

タマ「あっ、どうも」

(後日)

タマ「谷川先生に姉ごって言われたあ」

一同「ドーーッ(大受け)」

その内の一人「あんたも偉なったなあ」

タマ「ほっといてんかぁ」

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あねご【姉御/×姐御】

1 姉を敬っていう語。

2 博徒などの親分・兄貴分の妻や情婦。また、女親分。

あねごはだ【姉御肌/姐御肌】思い切りがよく、さっぱりしていて面倒見がよい女性の気性。

「姉御」を辞書で引くと、上記の解説となっている。

鹿野圭生女流二段は、”大阪の姉御”と呼ばれていたので、姉御=鹿野圭生女流二段の代名詞として使われたということが分かる。

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女性の名前の呼び方はTPOで変わる。

鹿野圭生女流ニ段の例でいけば、

鹿野さん

これは最も一般的な呼び方。

鹿野

苗字の呼び捨て。職場や中学や高校で、気の置けない同級生や後輩の女性に対して使われる。

あるいは教官やコーチが女性に対して使う。

歴史的に有名なところでは、「スチュワーデス物語」の「まつもとーっ!」、「エースを狙え」の「岡!」。

カノタマまたはタマ

愛称で呼ぶ。後輩なら「カノタマさん」という使い方。先輩が使うなら「カノタマ」あるいは「タマ」または「タマちゃん」。

安食総子女流初段の「あじあじ」、三浦弘行八段の「みうみう」のように「かのかの」とはならない。

そういえば、「タマちゃん」というアザラシが多摩川に現れたのも10年前になる。

たまお、またはタマ

名前の呼び捨ては、異性間の場合は、かなり親密でなければ使いづらい。

また男女間の場合、一般的には、親しくなれば親しくなるほど二人称を使わなくなる傾向がある。

お互いを呼び合う時、「ねえ、ねえ」など。

たまおちゃん

かなり年齢が上の人が使うことが多い呼び方。

内藤國雄九段は「タマヨちゃん」とよく使っていた。

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「忘れもんですよ、鹿野さん」でも「忘れもんですよ、タマさん」でもなく「忘れもんですよ、姉ご」。

絶妙な言葉だ。