泉七段は「野獣」と自称しながらも、基本は好青年だ。
子供の頃は実家が東映大泉撮影所に近かった関係で「ジャイアントロボ」などの東映特撮テレビ番組に、子役エキストラとして出演していたこともある。
泉七段は独身時代、どちらかといえば豪快な飲みっぷりで、会話の途中で「ああ、こんなことじゃいけないよな。ガオーー、ガオーッ!」」と雄叫びをあげることもあったが(といって酒癖がとても悪いわけではない)、結婚後は「ああ、いけないな。これじゃガオガオだよー」に変化した。奥様の影響なのか、とことんまでは飲まなくなった。
もう一つ変わったことは、結婚してから飼い始めた犬の「エルちゃん」のこと。ワイヤー・フォックス・テリア雌の「エルちゃん」は5年前くらいの泉七段の近代将棋の連載「囲いの攻略法」にいつも出ていたので、覚えておられる方もいらっしゃるだろう。
泉七段はエルちゃんのことが可愛くてしかたがなかった。飲みに行ったときもエルちゃんの写真集を見せてくれた。確かに可愛い犬だ。
近代将棋での泉七段の連載はその後「駒落ち将棋教室」へと姿を変え2006年まで続けられた。
この間に泉七段は「銀1枚落ち」という手合いを開発している。
下手が指定したほうの銀を上手が1枚落とす。
普段駒落ちの勉強をしていない多くのアマチュアにとって、いつもやっている得意戦法を使える平手感覚の駒落ち。
たとえば、四間飛車をどんなに好きな人でも、二枚落ちや飛車落ちで四間飛車をやろうとは思わないだろうが、銀落ちなら喜んで四間飛車にするのではないか。
私も一度、指していただいたが、二枚落ちや大駒落ちに比べれば下手は厳しいが、非常に勉強になった。「銀1枚落ち」はヒットだと思う。
「ガオー」にしてもエルちゃんにしても、泉七段のひたむきな純粋性がとてもよくあられているし、アマチュアへの指導でも泉七段はいろいろなアイデアを持っている。
今期は、更なる様々な活躍に期待したい。