郷田真隆九段の真骨頂(1)

今日から名人戦。

実は私は、縁があって、NHK将棋講座テキストでNHK杯将棋トーナメントの観戦記を3回書いたことがある。今から3年以上前のことになる。

生まれてはじめて書いた観戦記は、2005年度2回戦の郷田真隆九段-先崎学八段戦。

「郷田の真骨頂」という題で書いた。

この時の郷田真隆九段の、私にとっての心打たれる思い出話は、名人戦が終わった後に書きたいと思うが、今日はその時の将棋を。

郷田九段らしい、自分の思い描いた絵図に向かって一直線に突き進む攻め将棋の典型パターン。「郷田の将棋」そのもの。

郷田九段インタビュー(朝日新聞)

※「 」内は、当時の観戦記からの抜粋の文。

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郷田九段の先手、先崎八段の後手。

オーソドックスな角換わり腰掛銀の展開。

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「郷田は持ち時間一杯考えて▲6四角と打ち据えた。自ら手を作りに行く手だ」

3

「角を要所に配した郷田の後続手は▲4五歩。聞き手の千葉女流王将をして『カッコいいですね』と言わしめた手だ。ここから終局まで郷田らしさを絵に描いたような一直線の攻めが繰り広げられる。郷田は▲6四角と打つ時から『一気に決めれば勝つ。長引くと負ける』と考えていた」

4

「▲4五歩から銀交換の後、郷田は飛車先を突き捨て▲5六金と一旦締まる。△2二玉は▲6四角の間接的な睨みを避けた動きだが、それに対し郷田は▲2五歩と継ぎ歩攻め。2四の地点に先崎にとっては気持ちの悪い空間が出来上がった」

999

「ここで、いつもはフワッとした感じで駒を置く郷田が駒音を立てて放った手が▲8二銀。先崎が『銀を打たれて急に焦ったんですよね』と語るほど、なかなか気が付かない手だが、指されてみれば『なるほど』という手。桂や香を確実に手に入れて2四に打つ狙いだ」

つづく