女流棋士による棋風の違いの話。
近代将棋1997年9月号、中井広恵女流六段「棋士たちのトレンディドラマ」より。
女流棋士は、ちょっとの変化にもすごく敏感だ。新しい服を着た時などは、必ずといっていいほど、数人に、
「それ、おニューでしょ」
と、声をかけられる。
中でも、高橋和ちゃんは、
「ああっ、その服、和知らないですよ」
と、購入したことを報告していないと言わんばかりに攻めてくる。
他にも、持ち物一つ一つに念入りにチェックが入るのだ。そして、気に入った物があると、目をウルウルさせながら「これ、いいですねぇ」を連発する。
そのうち、だんだんと「プレゼントしなくちゃいけないかなあ…」という気にさせられてしまうのだ。
和ちゃんばかりではない。彼女と大の仲良しの中倉彰子ちゃんも、私のもっているモスグリーンのバッグを狙っていて、会うたびに
「あのバッグ、どうしてますか?」
とさぐりを入れてくる。
「どうしてますかって言ったって、犬や猫じゃないんだから、病気になったりはしないよ」
彼女は一見しっかりとしたお嬢さんに見えるが、実はかなりの天然ボケ娘である。
(そこが人気のある所なのだが)
「いえ、無事ならいいんです」
ちゃんと家にあると知ると安心するのだ。
あのバッグとも、もうおさらばかぁ……と覚悟を決めている。
でも、若手女流棋士達は人なつっこくて本当に可愛いのだ。
女性の私がそう思うのだから、男性ファンが多いのもうなずける。
(以下略)
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これは、ずいぶん前に船戸陽子女流二段から聞いた話。
船戸女流初段(当時)が将棋会館に向って歩いていると、中井広恵女流五段(当時)が遠くに見えた。
船戸女流初段は、そこから駆け足になって、中井女流五段へと向っていく。
「中井せんせいーっ」
中井女流五段が振り向くと、船戸女流初段は「可愛いっ」と言いながら中井女流五段をムギュッと抱きしめた。
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棋風というかキャラクターがそれぞれ面白い。とても楽しそうな時代だ。