仙台の「杜の都 加部道場」のサイトに、リレーエッセイのコーナーがある。
杜の都支部の役員や、加部道場に通う子供たちの父兄によるエッセイで、2週間に1回更新されている。
非常に実感がこもった文章ばかりで、いつか記事にしようと思っていたのだが、個人的に最上級に素晴らしいと思うエッセイがアップされたので、ここに紹介したい。
将棋を今までやってきて、無意識には感じていたけれど言葉にはならなかったこと、思ってもいなかったことが、将棋のことにはあまり詳しくないお母さんによって見事に表現されている。
とても素敵なお母さんであり女性なんだなと思う。
(エッセイ集は1行目のリレーエッセイをクリックすると見ることができます)
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息子が将棋を覚えたのは小学4年の夏休みで、道場へは5年の春から通っています。
強豪エリート揃いの加部道場の子供たちの中にあっては、どんじりスタートも良いところです。 親も子も、道場や将棋仲間やお母様たちに、ただ憧れと尊敬の念を抱き続けた2年間でした。そこで今日は、まだまだ初心者からの素朴な疑問から…。
加部先生はおっしゃいました。
「将棋は、負けるともの凄く悔しいんですよ。」
「はあ、そうですか…。」
じゃあ、勝ったら飛び上がりたいくらい嬉しいんですよね!
でも、あの終局の場面はどうだろう。対戦者のそぶりからは、どっちが勝ったか負けたかよくわからないし。
歓声も挙げなきゃ、万歳もなければ、ガッツポーズも無し。回りの人たちも揃ってシーンだし….。
そのうえ感想戦を淡々と…、負けた方にしたら傷口に塩グリグリじゃあないかしら?
勝った方も笑いを堪えるのに必死かも。
あの精神性はどこから生まれるのだろう…。
敗者への共感、弱者への愛情、劣者への同情?まさに惻隠の情、気高き武士道精神なのでしょうか。
黙ってひたすら考える、真剣な横顔の美しいこと、素敵なこと。
全てを自己責任で受け止めて、言い訳無し、お世辞も無し。「男はストイックでなくちゃ」と、誰かが言っていたっけ。
息子よ。
負けて負けて、悔しくて悔しくて、それでも黙って耐えて頑張っておいで。
きっと負けた分だけ君の貯金になるから…。
考えて考えて、答えがなくても考えて…人生なんて答えの分からぬことばかりだから。
そんなことを思いながら子どもの横顔を見ると、何となく大人びて見えたり…しないかなあ(笑)
ああ、私も子どもの頃に将棋覚えたかったなあ!