将棋ペンクラブ交流会の懇親会の時に、木村晋介将棋ペンクラブ会長に話をして、木村晋介会長が「その近代将棋、絶対に見てみたい」と、とてもウケていた話。
近代将棋1998年11月号、中井広恵女流五段(当時)「棋士たちのトレンディドラマ」より。
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よく、女流棋士は勝負に辛いと言われるが、負けたくないと思う気持ちは、女性の方が強いのかもしれない。
そういえば、こんなこともあった。木村晋介さんと、パーフェクTVの囲碁・将棋番組でお好み対局をした時のこと。
木村さんといえば、TVなどでお馴染みの有名な弁護士さんで、将棋が大好きというお方。以前にも別の番組で島八段と対局したことがあるという。
二枚落ちの対局だったのだが、何せ、普段と全く違うテレビスタジオでの対局。緊張してしまう人が多いので、
「中井さんよろしくお願いします」
と、関係者の方々。
決してこれは手加減して下さいということではなく、秒読みなどであわててしまった場合、フォローをお願いしますという意味で、アマチュアの方との対局の時にはよく言われることである。
ところが、周囲が心配する必要が全くないと言っていいほど完璧な指しまわしで、木村さんに完敗。
それでは今度はと、テレビ東京の番組で山田女流二段と飛車落ち対局を企画。
二枚落ちは何局か経験はあるが、飛車落ちはあまりないということ。
テレビ東京の番組は持ち時間も短いため、秒読みになりやすい。
さっそく久美ちゃんに電話をした。
「今度木村晋介さんと対局するでしょ。私は二枚落ちで完敗だったんだけど、今度は飛車落ちだし、持ち時間も短いから、ヨロシクね。とっても優しい、素敵なおじさまだから」
ところが、心配していた通り、木村さんは手がのびず、力が出し切れない。一方、久美ちゃんはビシビシと急所に手がいき、駒音もだんだん高くなっていく。
対局中、読み上げの高橋和初段と高群佐知子二段が”オニ”、”悪魔”と書いた紙を久美ちゃんに見せたほど。
そして対局終了後。
「だって、広恵ちゃんからわざわざ電話がかかってきて『頑張ってね』って言われたんだもの」
あの……何で私がアマチュアの方相手のお好み対局に”頑張って”なんて電話しなくちゃいけないの?
全く、久美ちゃんたら。
(以下略)
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木村晋介弁護士は、この時対局に没頭していて、”オニ”、”悪魔”と書いた紙の存在は、先週の土曜日まで知らなかった。