女流棋士が五人集まると、どのような展開になるか。
事例的に、非常に貴重を文献を発見した。
近代将棋1998年4月号、中井広恵女流五段(当時)の「棋士たちのトレンディドラマ」より。
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数か月前から月に一度くらいのペースで、親しい女流棋士達とお食事会を開いている。といっても、レストランで外食をするわけではなく、各々の家へ招いて手料理をご馳走する会なのだ。メンバーは、山田久美二段・高橋和初段・中倉姉妹に私の五人。
(中略)
二月は我が家での開催となったのだが、山田家からスタートして、皆どんどん気合の入ったものを作ってくるので、手抜きができなくなってしまっている。
一応主婦らしいところも見せておかねばとメニューから長考してしまった。
いつも夕食からなので、それまでザウス(室内スキー場)でスノボーをやろうということになったらしい。ザウスは初めてなので、楽しみにしていると、
「中井さんはダメです。料理に専念して下さい」
と和ちゃんに叱られ、泣く泣く諦めることに。厳しい後輩だ。
夕方になって、和車に乗って一行が到着した。久美ちゃんがやけにお尻を押さえている。どうやらスノボーで転んで打撲したらしい。
そして、どうにも我慢できなくなったのか
「広恵、シップ薬ある?」
と聞いてきた。
「もちろんあるよ。実家が薬屋だからね。でも、まさかお尻に貼るわけじゃないでしょうねぇ」
「そうだよ。かなりおもいっきり打ったから、お尻に蒙古斑ができてるかもしれない」
と言いながらスボンに手をかけたので、和ちゃんが、
「えっ、ちょっと待って下さい。ここで貼るんですか!?」
「あのねぇ、何が楽しくてここでストリップしなくちゃなんないの? ちゃんと向こうで貼ってくるよ」
我々の期待を裏切って、久美ちゃんは別室へ。その間、こちらではいったいどうやってお尻にシップを貼るんだろうという議論に。
桃にサランラップを巻くようなものでピタッと納まる訳がない。
戻ってきた久美ちゃんに、彰子ちゃんが興味津々で、
「ちゃんと貼れましたか?」
「大丈夫、ちょっと冷たいけどね」
「でも、どうやって貼ったんですか?挟まっちゃいませんか?」
「こうやって、もちろん小さく切ったよ。じゃないと、谷間に入っちゃうでしょ!」
ご丁寧にゼスチャーまで付けて説明してくれた。
「中井さん、これ原稿のネタになりますよ」
「でも、これ書いたら、久美ちゃんのイメージが崩れちゃうでしょう。蒙古斑だよ!? さすがにマズいよ」
マズイよねぇ。こんな面白い話は皆さんに教えなきゃ。
(つづく)
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先々週、中井広恵女流六段と山田久美女流三段の対局があった。
(女流王将戦)予選は1回戦・2回戦が同日にあり、私は午前中の勝者との対戦でしたので当日になってみないと対戦相手がわかりません。25分40秒ですので、かなりの早指しです。横歩取りの激しい将棋でしたが、攻めが決まって勝利することが出来ました。
ところで、噂は本当だったようです。ずっと気になっていたのですが、自分のことのように嬉しいですね。おめでとう!!