藤井猛九段の殺し文句

近代将棋2001年2月号より、マジシャンの小林恵子さんの「棋士との愉快な交遊録」より。

藤井猛竜王との初めての出会いは日本橋東急の将棋祭りイベントだった。キリンペアマッチの藤井竜王・中井女流名人ペアと屋敷七段・石橋女流三段ペアの対戦だ。

日本将棋連盟より、「三浦弘行七段の大盤解説の聞き手とマジックをやってもらえないか」という連絡を受けた。

聞き手のお仕事は初めての挑戦だ。私は四間飛車党なので戦型が相居飛車系になったら、チンプンカンプンだ。

うまく聞き手をできるかどうか不安だったが、対局者に藤井さんの名前を見つけて安心する。「戦型はきっと四間飛車だ」と思いながら会場に向った。

最初は四間飛車になりそうな雰囲気だったものの、解説三浦さん曰く、「四間飛車になりそうでならない偽四間飛車模様ですね」とのことだった。

終局後中井さんは「作戦会議で四間飛車案も出たのですが、私が居飛車党なので避けました」ということだった。

解説の聞き手もなんとか無事に済み、控室に戻ると藤井さんが一人でいらした。全くの初対面だ。緊張しながら挨拶をした。

「今日は残念でした。私たちマジシャンは四間飛車党が多くていつも藤井システムを勉強させていただいています。がんばってください」と言うと、藤井さんは、にこにこしながら「なんだー、言ってくれれば最新の四間飛車を見せたのに!」と気さくな返事を返してくれたのだ。

もうそれだけで心は飛び上がり、事務所に戻ってから、「ねぇー聞いてー今日ね……」と皆に話した。

(以下略)

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とにかく、なんか格好いい台詞だ。