鬼殺しは、ハメ手、奇襲の代表格。
鬼殺しの心情的ファンは結構多いかもしれない。
鬼殺しが見事に決まると次のようになる。
ここから△8四歩▲6五桂△6二銀▲7五歩△6四歩▲2二角成△同銀▲5五角。
もはや鬼殺しから逃れられない局面。
以下、△3三銀▲6四角△5二金右▲7四歩△6三金▲7八飛△6四金▲7三歩成。
▲7八飛が落ち着いた好手。
これが鬼殺しの成功例。
定跡書では、▲6五桂と跳ねた次の手は△6二銀ではなく△6二金で鬼殺しを退治できると解説されている。
1図以下、△8四歩▲6五桂△6二金▲7五歩△6四歩▲2二角成△同銀▲5五角△6三金まで。
鬼殺しは封殺された。
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ここからが今日の本題。
「イメージと読みの将棋観」の創成期、第4回。
将棋マガジン1996年6月号、青島たつひこ(鈴木宏彦)さんの「佐藤康光&森内俊之の何でもアタック」より。
第1図に対する二人の見解。
森内「普通に△6二銀と指されて先手がよくなる構想はありません。実戦でやられたら、後手を持ってよくする自信があります」
佐藤「これは疑問手と思う。▲7七桂には△6二銀。これですぐに▲6五桂は△3二金で無理。またゆっくりしていては桂頭を狙われる筋や角が使えないため作戦負けになる。悪手に近い疑問手だと思う」
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なんと第1図から△6二銀で、鬼殺しは手も足も出なくなってしまった。
簡単な鬼殺し対策があったものだ。
古来の定跡書の△6二金は、鬼殺しの言い分も聞くというか、鬼殺しの個性を出させて退治するパターン。
悪役プロレスラーの得意技や反則を出させて(受けて)最後には日本人レスラーが勝つ、力道山時代の日本プロレス、ジャイアント馬場時代の全日本プロレスのような雰囲気だ。
一方の、森内流・佐藤流の△6二銀は、最初から相手の技を封じる現代の格闘技みたいなものかもしれない。
鬼殺しの顔が全く立っていない。