空前絶後な飲み会・カラオケ

真夏の北海道の超豪華な参加者の飲み会とカラオケ。そして毛蟹やタラバ蟹も。

近代将棋1999年10月号、故・池崎和記さんの「普段着の棋士たち 関西編」より。

某月某日

王位戦第2局(羽生善治王位-谷川浩司棋聖戦)の観戦で釧路へ。対局室を検分したあと、中村八段(副立会人)、森内八段(大盤解説)、佐藤佳一郎三段(記録)、高林記者(三社連合)と和商市場をのぞく。毛蟹とタラバ蟹(とても安い)を買ってクール宅急便で自宅に直送しようというハラだ。店がたくさんあり、また値段も微妙に違うので目移りするが、それでも森内さん以外は全員買った。森内さんは市場を一周してから(たぶん値段をチェックしていたのだろう)「また明日きます」という。

前夜祭で、小学生のファンからすごい質問が飛び出した。

「プロ棋士のなかで羽生さんより強い人がいると思いますか」

と、羽生さんに聞いたのだ。谷川さんが苦笑いしたのは言うまでもない。羽生さんは「いい質問ですね。答えられません…」。

このあと棋士紹介があって壇上に並ぶ。

(中略)

棋士たちは”写真攻め”にあって料理を口にするヒマはない。で、前夜祭のあと、関係者だけで会食。そのあと中村さん、森内さん、高林さんと街に繰り出して12時まで飲む。

某月某日

王位戦初日。戦型は第1局と同じ横歩取りの中座流だった。同じ形を先後を替えて戦う、というのが面白い。

局面が遅々として進まないので、控室で中村-森内の練習将棋が始まる。対局時計を使った早指し戦だ。

午後、森内さんは和商市場へ。大盤解説会は2日目にあるので初日はヒマなのだ。あとで聞いたら、閉店間際を見計らって買い物をして、かなりまけてもらったらしい。なるほど、こういう手があったか。

某月某日

王位戦2日目。控室に郷田八段が現れる。わざわざ王位戦を見にきたらしい。熱心なことだ。

勝負は谷川さんに致命的な見落としがあって、短手数であっけなく終わった。対局過多で疲れているのではないか。そんな気がした。

打ち上げのあと、両対局者、中村さん、森内さん、郷田さんと飲みにいく。2軒はしご。羽生さんと谷川さんが酒席をともにするのは、きわめて珍しい。羽生さん、郷田さん、森内さんのカラオケを初めて聞いた。

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このような豪華な組合せでのプライベートな飲み会というのは、100年に一度あるかないかというくらい珍しいことになるのだろう。

11年前の、真夏の北海道での出来事。

それにしても森内九段は買い物を戦略的に行っている。

急に毛蟹やタラバ蟹を食べたくなってきた…

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和商市場の名物のひとつは勝手丼。

"勝手丼"とは市場内を廻って自分の好きな海産物を少しずつ買って、ご飯に乗せてもらって作る、自分だけのオリジナル海鮮丼だ。

お金がなくて困っている貧乏旅行のライダー達に、美味しいものを食べてもらおうと、市場内のとある鮮魚店の主人が考え出したのが勝手丼のシステム。

市場内の総菜屋でご飯だけ買ってこさせて、そのご飯の上に、店主が新鮮な海産物を少しずつ乗せてやったことが"勝手丼"の始まりという。

勝手丼作法は次の通り(和商市場のサイトより)

  1. 市場内の総菜屋さんで発泡の丼ぶりに白いごはんを買う。【ご飯の値段】小盛120円:中盛240円:大盛300円 酢飯を用意している店もあるヨ。)
  2. 市場内の鮮魚店・塩干屋・魚卵専門店を巡り材料の目星を付ける。材料は100g単位か、切り身で売られている。【材料いろいろ】イクラ・うに・鮭・タラコ・ホッキ貝・ほたて・いか・サーモン・オヒョウ・ツブ貝・ボタンエビ・カニ子・カニむき身・甘エビ
  3. お気に入りの具を丼にのせてもい、仕上げに店の人から醤油をかけてもらって完成。【ご予算】標準的には1,500円位。ちょっと欲張っても2,000円。

ああ、ボタンエビも絶妙そうだ…