今日から王座戦五番勝負が始まる。
羽生王座は19連覇中であり、かつ王座戦では19連勝中。
このようなタイミングで渡辺明竜王が挑戦してくる。
玲瓏:羽生善治データベースによると、羽生善治王座と渡辺明竜王の対戦成績は、羽生王座から見て、13勝15敗(0.464)。先手番で7勝7敗、後手番で6勝8敗。
タイトル戦だけ見ると、
2003年王座戦 3勝2敗
2008年竜王戦 3勝4敗
2010年竜王戦 2勝4敗
2005年から続いている王座戦での羽生王座の連勝記録19連勝だが、今シリーズで途切れる可能性は大きいものと思われる。
そのような意味でも、第1局から緊張感と緊迫感が強く漂う戦いが続きそうだ。
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2003年の王座戦の一幕を振り返ってみたい。
近代将棋2003年12月号、相崎修司さんの「時代を動かす者、二人」より。
今期の王座戦第1局終了直後にて。
惜しくも敗れた挑戦者の渡辺明五段が対局室から自室に引き上げる途上、
「クソッ!」
声に出していったわけではない。手にした信玄袋を思い切り壁に叩きつけたときの音響がそれを表わしているように聞こえた。
勝てる将棋を落としたという悔しさだろうか。その鬱憤を晴らすかのように第2局は完勝、第3局は超劣勢の将棋を耐えに耐えて逆転勝ちした。
気が付けば王者・羽生善治をカド番に追い込んでいる。
今年の3月、王位リーグにて羽生と初めてあいまみえたときは完敗だった。それから半年、羽生世代を次々と破ってここまで来た渡辺は、最後の壁を破ろうとしている。
「(王座を)取るしかないね」
渡辺の友人はみなそう言う。
「そういうけどねぇ」
彼の発した言葉が、最後の一枚の壁の厚さを的確に示しているのだろうか。
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この五番勝負、必ずや名局が誕生すると思う。